「ポケモンGO」は中国のスパイ? CIAの道具?...大人気ゲームを直撃した「スパイ疑惑」とは?
中国のスパイ活動の道具?
愛好家だけでなく、このゲームそのものも地雷原にさまよい込んでいた。世界の多くの国が国家安全保障上の懸念を示し始めたのだ。 インドネシアとエジプトの治安当局は、ポケモンGOをスパイ活動の隠れみのだと批判。ロシアの要人たちは、ポケモンGOをCIAの道具、もしくは悪魔の代理人と呼んだ。イランは全面的に禁止し、中国も「地理的情報のセキュリティーを脅かす」との理由で禁止した。 それに対し、アメリカではポケモンGOをプレイすることは制限されていなかった。その結果、あらゆる場所にポケモンキャラクターが出現するようになった。報道によると、ホワイトハウスや国防総省の敷地内にもポケモンが現れたという。 メリーランド州フォートミードの国家安全保障局(NSA)本部の駐車場でプレイしている人もいたと、同局の元職員は語っている。「どうもかなりレアなポケモンがいたらしく、敷地内でスマホを手に歩き回る人が大勢いた」 NSAやCIAなどの安全保障関連の政府機関で働くテクノロジー好きの人たちは、この類いのゲームに夢中になりやすい。その点に、上層部は不安を募らせていた。「ポケモンGOへの懸念は大きかった」と、エネルギー省の元高官は言う。 情報機関の元職員たちによると、エネルギー省とNSAの当局者たちは、ポケモンGOが中国のスパイ活動の道具なのではないかと──特段の根拠なしに──案じていた(筆者とフォーリン・ポリシー誌は、ポケモンGOのセキュリティー問題についての文書および内部の議論を知るNSA、CIA、エネルギー省の元当局者7人に話を聞いた)。 国防総省は職員に対して、政府支給のスマホにポケモンGOをダウンロードしないよう、また機密性の高い施設の周辺でポケモンを探さないよう要請した。それでも、同省全体として軍や同省の施設内でのプレイを規制することはなかったと、当局者は述べている。 しかしその一方で、水面下ではもっと大きな不安材料が持ち上がっていた。ポケモンGOの人気が爆発的に高まるとともに、NSAの本部、ニューメキシコ州の最高機密扱いの核兵器研究施設の近隣、バージニア州北部のCIAの秘密施設でもポケモンが出現するようになったのだ。これらの施設で働く職員の中に、熱心なファンがいたためだ。 これにアメリカの防諜当局は懸念を募らせた。なぜ機密性の高い場所にポケモンが出現したのか。このアプリは「標的型スパイツール」として機能しているのか。 CIA、NSA、核兵器を管理するエネルギー省のセキュリティー専門家は職場でポケモンGOのプレイをやめるよう指示するメモを同僚たちに送った。 エネルギー省がポケモンGOの国家安全保障上の潜在的脅威を懸念しているというフォーリン・ポリシーの報道について、同省の広報担当者は「少し誇張されている」と言った。 NSAはコメントを控えたが、CIAの広報担当者は「デジタル分野の最適な方法」のために「責任ある措置」を取ったと回答した。 ここではっきりさせておこう。ポケモンGOが外国の情報機関とつながっていたとか、スパイ活動に利用されていたという証拠はゼロだ。 7億7000万ドルを調達したナイアンティックの初期の出資者には、任天堂と株式会社ポケモン(いずれも日本企業)、そして元親会社のグーグルが含まれる。 中国の大手テクノロジー企業・網易(ネットイース)や韓国の巨大テック企業サムスンも出資しているが、資金提供者の多くはアメリカに拠点を置くベンチャーキャピタルだ。ナイアンティックの成り立ちを見ると、むしろ米政府とのつながりが目に付く。 CEOのジョン・ハンケ(John Hanke)は地理空間マッピング会社キーホール(Keyhole)の共同創設者。同社は04年にグーグルに買収され、最終的にグーグル・アースとグーグルマップの誕生につながった。 キーホールは03年、CIAが設立したベンチャーキャピタルファンドのイン・Q・テル(In-Q-Tel)から資金提供を受けている。同社の技術はイラク駐留米軍を支援するために使われた。