『虎に翼』小林薫から伊藤沙莉へ最後のエール 寅子や桂場に受け継がれる“穂高イズム”
尊属殺への反対意見で発揮された“穂高イズム”
桂場のやけ酒は、彼にとっての穂高という存在の大きさを示してもいる。尊属殺の最高裁判決で穂高が書き記した反対意見は、「この度の判決は、道徳の名の下に国民が皆、平等であることを否定していると言わざるをえない。法で道徳を規定するなど許せば、憲法14条は壊れてしまう。道徳は道徳。法は法である。今の尊属殺の規定は明らかな憲法違反である」という、周りに何を言われようと声を上げ続けた、寅子や桂場たちが理想とする穂高イズムそのものだ。尾野真千子の語りで触れられる「尊属殺の問題は20年後、再び世間をにぎわすことになります」については、「尊属殺重罰規定違憲判決」で調べれば、その後に穂高のような声の届く先となった出来事のことが知れるだろう。 寅子が離婚調停を担当する、両親の間に生まれた栄二(中本ユリス)。父と母どちらが引き取るかではなく、栄二の気持ちを優先することで、寅子は家裁の理想に近づくことができた。息つく暇もないほどに多忙な日々を送る寅子は、すっかり母親としての面は疎かになっていた。“朝ドラ受け”でも言及されていたように、優未(竹澤咲子)のテストの84点という点数を一切誉めなかったこと、直明(三山凌輝)に告げる「優未とじゃキラキラしないから」というセリフ、さらに第14週のラストカットである喪服のまま布団で眠る寅子を見つめるスンッとした顔の優未とその背中を見つめる花江(森田望智)が、猪爪家の絆に入り始めている小さなヒビと次週の不穏な展開を予感させている。
リアルサウンド編集部