「手元の文字が見えにくい=老眼」は大きな誤解!“誰もが必ず老眼になる理由”を専門家が解説
歳とともに「これって老眼?」と思う機会が増えてきたのではないだろうか。では、実際老眼とはどんなものなのか。
今回は加齢による目の不調について、深作眼科の深作秀春医師に教えてもらった。
「老眼=手元の文字が見えにくい」は誤解!
――最近、本の文字が読みづらくなってきたのですが、これって老眼ですかね……。 40代になると目のピント機能が衰えてきて、50代になると多くの人が、調整機能が弱くなります。だから40代後半であれば、老眼と考えていいでしょうね。 ――やっぱりそうなんですね……。 ただ、老眼というと、皆さん手元の文字が見えにくいことを指すと思っているんですね。だから近視の人は「遠くは見えないけれど、近くは見えるから老眼ではない」とか言うんだけど、本来の老眼というのは、目のピント機能の衰えを指すんです。 つまり距離は関係なく、1つの焦点しか合わない、暗いところで見づらい、遠くから近くに視線を移したときにピントが合いづらいなども、全て老眼なんですね。
――近くだけじゃないんですね! ところで、どうして老眼になるんでしょう。 目のピントというのは、眼球にある水晶体が膨らんだり、薄くなったりすることで合うんですね。そして、この水晶体の動きは毛様体筋の収縮により調整されます。 ところが歳をとってくると、水晶体の弾力がなくなり、毛様体筋が衰えて収縮力が弱くなる。そのため、ピントが合いづらくなるんです。 ちなみに最近よく聞かれる“スマホ老眼”というのは、スマホばかりを見ていると、毛様体筋が凝り固まってしまって、ピント調整ができなくなること。これは加齢には関係なく、20代でも30代でも、起こる可能性があります。 若くして起こる老眼もありますから、目を酷使しないことが大切です。
「誰もが絶対に老眼にはなる」
――個人差はあるのでしょうか? 女性はホルモンバランスの影響で、男性よりも調整力が落ちるのが早いと言われています。また本人の感じ方も大きいので、実際は老眼になっていても気づかない人もいる。ただ、数年の違いはあっても、必ず老眼は起こるので、誤差の範囲と思っていていいでしょうね。 ――絶対に老眼にはなるってことですね……。 そうですね。また加齢による目の不調は老眼だけではありません。 白内障は80代以上になるとほぼ100%が発症します。また、70代で約90%の人が発症するにも関わらず、緑内障は失明寸前まで気づかない人も多いんですね。緑内障は視神経が障害される病気で、一度障害された視神経は元に戻りませんから、定期的に検査し、早期発見をすることが大切です。 多くの方々がかかる白内障と、これに付随するように発症する緑内障ですが、徐々に進行するために気づかないことが多いのが実情です。特に緑内障で失われた視神経は再生しないので、早期発見早期治療が何よりも重要です。 薬だけでの緑内障治療では80歳ぐらいまでに失明する方が多いので、白内障だけでなく、緑内障でも最高の緑内障手術が可能な眼科外科医を探す努力などをしてほしいですね。 今の日本人の平均寿命は80歳以上。だけど目の老化は50歳代から急速に進みます。ある程度、年齢を重ねたら、こういう病気が起きるんだということを認識して、頼りになる眼科医を見つけて、自分で目を守る意識を持っていただければと思います。 ◇ いつまでも若々しく、健康的に過ごすためには、ボディメンテナンスだけでなく、目のメンテナンスにも気をつけるべきなのだ。 林田順子=取材・文
OCEANS編集部