書道の「師範」 大阪桐蔭・村本が仲間に書いた言葉 センバツ
第95回記念選抜高校野球大会で準決勝に進んだ大阪桐蔭の村本勇海二塁手(3年)は意外な特技を持つ。それは書道。かなりの達筆で、人に教えられるほどの資格を持つという。大阪桐蔭の選手の帽子の裏には、村本選手の直筆でそれぞれの選手の思いがこもった文字が書かれている。 【写真で】似てる? 慶応・清原、東邦・石川らセンバツで躍動 村本選手は淡路島にある兵庫県南あわじ市出身だ。野球を始めるよりも1年早く、小学1年生の時に地元の教室で書道を始めた。母のひかりさん(49)は「段位が上がっていくのがうれしかったのだと思います。野球と同じくらい頑張っていた」と回想する。2年の時に入った少年野球チームの練習に加え、週1回の書道教室には嫌がるそぶりもなく通い続けた。 中学生になると、大阪桐蔭で2018年に甲子園春夏連覇を成し遂げた藤原恭大選手(ロッテ)に憧れ、藤原選手の出身である名門硬式野球チーム「オール枚方ボーイズ」(大阪)に入団した。練習場までは淡路島から車で約2時間。土曜日の朝、両親の車で練習場に向かい、その夜はホテルに宿泊。翌日の練習に参加して、淡路島に帰る。そんな生活を3年続けた。 野球が忙しくなるにつれ、書道をやめようと考えた時もあったが、「『師範』の資格を取るまでは」と継続した。結局、中学時代の最後までやり切り、「師範」の資格を取得できた。 ひかりさんは「目標を決めると、絶対に達成するまで努力する。野球でも習字でもそれは同じでした」と強調する。枚方ボーイズの1年先輩で、昨年のU18(18歳以下)ワールドカップ(W杯)高校日本代表にも選ばれた赤堀颯さん(18)=福島・聖光学院高出身、現・国学院大=も「字がうまかったのは覚えています。野球に関してもかなりストイックで抜群にうまかった。中1からレギュラーで、投手で5番。後輩だったが、村本『さまさま』でした」と振り返る。その上で、「僕のことを『ほーりー』と気軽に呼んでました。先輩にもかわいがられる愛嬌(あいきょう)のあるやつで、野球もいつも楽しそうにしていた」と続けた。 チームメートの帽子の裏にはどれも達筆にさまざまな字を書いた。主将でエース左腕の前田悠伍投手(3年)は華麗な投球をするという意味を込めた「華」。準々決勝の東海大菅生(東京)戦で本塁打を放った佐藤夢樹選手(3年)は名前から取った「夢」。2年生ながら3番を打つ徳丸快晴選手は「満開」。どれも、メリハリがあり、力強い筆致だ。 村本選手は自身の帽子の裏には「美」の1文字を書いた。それは「縁起がいい言葉だと、母に言われたから」だ。それでも、自身のモットーは「美」とは裏腹の「泥臭く」。3回戦の能代松陽(秋田)戦で、2ストライクから決めた決勝スクイズはまさにそれを体現するプレーだった。 字がきれい。でも、小2から続ける毎日の素振りは一日も休んだことはなく、ユニホームもいつも真っ黒。そんな「二面性」の魅力を持つのが村本選手だ。【大東祐紀】