「オリンピック競技に選ばれなくても」カヤック世界王者・高久瞳 八王子の小学校プールで練習しながら誓う「次の目標」
■「五輪種目での採用」だけがすべてじゃない ── フリースタイルカヤックがオリンピック種目になったら、もっと注目が集まると思うのですが、可能性はありますか? 高久さん:残念ながら、フリースタイルカヤックがオリンピック種目になるのは難しいと思っています。カヌー競技は非常にたくさんの種類があります。あらたなオリンピック競技に選ばれるとしたら、フリースタイルカヤックより歴史が長い競技になる可能性が高いんです。もちろん、もしオリンピック種目になったら、いまよりもっとフォローを受けられるだろうとは思います。マイナー競技だから、なかなかスポンサーがつかないのが現状で、金銭的にはかなり大変ですから…。
とはいえ、資金面の負担があっても、現状は苦になりません。大好きなことに取り組むのが、楽しくてしかたがないので。私がフリースタイルカヤックに出合ったとき、そのかっこよさに心を打ちぬかれ「生涯をかけてこのスポーツに取り組もう」と誓いました。難しい技を習得すると、さらに難易度の高い技に挑戦したくなります。とにかく奥深くて、それがずっと夢中で続けられる理由だと思います。 とはいえ、このスポーツの楽しさはたくさんの人に知ってもらいたいし、競技人口も増やしたいです。だから、地方に行ったときは体験会を開いてお子さんに挑戦してもらったり、講演会を行ったりしています。
■川にいるから思う日本の自然や水難事故の危うさ ── フリースタイルカヤックは川や湖で行う競技です。日々、自然と触れ合うなかで、感じることはありますか? 高久さん:自然環境の変化を肌で感じています。日本は水が多い国ですが、フリースタイルカヤックを行える川が年々少なくなっているんです。なぜならダムでせき止めている川が多く、水が流れなくなっているから。土砂も蓄積されていき、水位が浅くなっています。以前は関東にも、フリースタイルカヤックができるスポットがありましたが、近年はほとんどなくなってしまいました。水が少なくなったために、魚などの生き物も減っているようで、日本の自然との向き合い方を変えていく時期が訪れているように思います。