【名馬伝説・番外編】女性騎手が上位を独占する日は来るか!? 藤田菜七子の功績と女性ジョッキー列伝
■ 忘れてはいけない地方競馬のレジェンド 前述のとおり、JRAには女性ジョッキーが6名在籍していますが、かたや地方競馬には現在8名の女性騎手が登録されています。 そして、地方競馬を代表する女性ジョッキーといえば、この人を忘れてはいけません。名古屋競馬場所属の宮下瞳騎手です。すでに初騎乗から30年近くなる大ベテランですが、NHKや民放のテレビ番組で紹介されたこともあって、競馬ファン以外にも知られた存在です。 2011年に一度引退し、子育てしていましたが、3歳になった長男からの希望で2016年に復帰。この原稿を執筆している時点で通算1282勝を挙げているレジェンドです。 女性騎手のレジェンドといえばこの人のこともご紹介せずにはいられません。土屋薫です。 1958年生まれの土屋は、1978年に浦和競馬場でデビュー。のちに大井競馬場に移籍しますが、なんと1985年に渡米。1992年に引退するまでアメリカで263勝を挙げています。 ご主人はアメリカ・カナダで殿堂入りしている名騎手、サンディー・ホーリー(こちらもレジェンドで、年間515勝という大記録の持ち主)。夫妻で来日した際に元騎手・田原成貴と飲食店で鼎談したときの映像がYouTubeで見られます。 また、JRAの女性ジョッキーに関心のある方は、競馬開催日にネット検索すると、その日の女性ジョッキー騎乗予定馬がわかるようになっています。人気と注目度は、すでに武豊騎手並みと言えるでしょう。
■ 男女の斤量差と今後 男女が同じ場所、同じ土俵で勝ち負けを争う勝負事がスポーツの世界ではほとんどない中、競馬は特殊な分野と言えます。まして、その勝ち負けが観衆のフトコロと直結するのですから、騎手へのプレッシャーは相当なものがあるでしょう。 本来なら男女による違いを意識しないことが理想の姿でしょうが、ギャンブルという側面を持つこともあり、藤田菜七子デビューの3年後の2019年3月、JRAはレース騎乗時の負担重量(騎手自身の体重、馬具、重りなどの合計のキロ数。斤量とも言います)に関するルールを変更しました。 それまで男女一律だった競走馬が背負う斤量を男性騎手より女性騎手は2キロ軽くするという特典ルールを設定したのです(大きなレースは除きます)。 競馬の場合、優れた腕を持つ女性騎手でもゴール前の最期の追い比べになると腕力の違いで男性騎手にはかなわないとされることからの配慮です。賛否両論あるかと思いますが、肉体的な違いによる特典ということです。 できれば、近い将来、米国のように男女共に同じ斤量で戦えるようになるのが理想かとも思います。1キロ軽くなれば1馬身の違いが出ると言われる斤量の差がレース結果の言い訳とならないためにも、男性騎手を凌ぐような実力を持った女性ジョッキーの出現が待たれます。 ご参考までに、現在、競輪(自転車)では男女の力量に大きな差があるため男女混合レースは行なわれていません。競艇(モーターボート)の場合は同じ条件で男女混合レースが行なわれています。 (編集協力:春燈社 小西眞由美)
堀井 六郎