カラーマネジメント対応の「paint.net 5.1」が正式版に ~エフェクト・キャンバスも近代化
米dotPDNは11月12日(現地時間)、「paint.net 5.1」をリリースした。2023年1月以来のメジャーバージョンアップと位置付けられている。 【画像】フルカラーマネジメント、HDRおよび広色域ディスプレイのサポート 「paint.net」は、アプリ開発フレームワーク「.NET」で構築された高機能なレタッチソフト。64bit版のWindows 10/11およびWindows Server 2022に対応する寄付歓迎のフリーソフトで、公式サイト「getpaint.net」や窓の杜ライブラリからダウンロードできる。「Microsoft Store」から1,150円(税込み)で購入し、開発を支援することも可能。 「paint.net 5.1」の目玉はフルカラーマネジメント、HDRおよび広色域ディスプレイのサポート、入力レイテンシ(遅延)とメモリ使用量の大幅な改善、新しいぼかし効果などだ。また、調整(彩度や露出の補正、セピア化、ポスタリゼーションなど)とエフェクトに関する処理をGPUで移す取り組みが完了し、パフォーマンスと品質がさらに向上した。キャンバスのカスタマイズ設定も拡充されている。 ■ カラーマネジメント 「paint.net」は高機能だが、カラーマネジメントに対応しておらず、どのディスプレイでも意図したとおりの色で表示されないと困るプロユースでは使えないという弱点があった。「paint.net 5.1」ではこの弱点が解消されており、カラープロファイルが埋め込まれた画像であれば「PhotoSauce」と「Direct2D」で構築されたリアルタイムカラー変換を用いて正しい色表現が行われる。HDRおよびWCG(広色域)ディスプレイでは、「Windows Advanced Color」で高ビット深度出力とディスプレイの全色域の利用が可能。SDRディスプレイでは「sRGB」モードで動作し、一貫した色再現を提供する。 ■ エフェクトの改善 「paint.net 5.1」で新たに追加されたエフェクトは、ぼかしが2種類。 1つ目の「Sketch Blur」は「paint.net」独自のぼかし効果で、「P² quantile estimator」と呼ばれるアルゴリズムが用いられている。「paint.net 5.0」向けにも「Median Sketch」という名前でプラグインとして提供される。 もう1つの「Square Blur」は、各ピクセルの周囲の正方形領域の平均色を計算する、非常にシンプルなぼかし効果だ。不正確な近似を用いるが、その分高性能だ。 そのほかにも、既存のぼかしもアップグレードされているとのこと。これらはほぼすべてGPUで実行されるようになり、パフォーマンスが大幅に向上した(色の量子化と赤目除去のみ未対応)。 ■ キャンバスのカスタマイズ キャンバスではDXGI Flip Model、Advanced Color、Windows.UI.Composition.Canvasを活用したモダンなエンジンに書き換えられた。 これに伴い、アクセシビリティの改善のため、キャンバスの境界線の色をカスタマイズできるようになった。ピクセル単位での編集に邪魔なドロップシャドウ(境界の影)を無効化したり、自分好みにキャンバスの背景をカスタマイズすることも可能だ。 ■ メモリ使用量と入力レイテンシ 「paint.net」ではラグを減らすため長年にわたりさまざまな改良が施されてきたが、本バージョンでは比較的大きな改善が実現されている。 まずメモリ使用量に関しては、キャンバスのタイルキャッシュに手を入れ、タイルをコピーする代わりにCPUに移動させるようにすることで、CPUのメモリを大幅に節約できたという。スワップチェーンの処理も変更され、タブごとに1つではなく、すべてのタブで共有されるものを2つだけ用意する仕組みになった。1つ目はアクティブなタブのためのもの、2つ目はタブの切り替え時にちらつきを防ぐためのものだ。 入力レイテンシに関しても、Microsoftが「DirectX」ゲームでレイテンシと消費電力を削減するために設計したプレゼンテーション技術「DXGI Flip Model」を採用。また、プレゼンテーション処理が優先度の高い専用バックグラウンドスレッドに移動された。GPUがピクセルの最終処理とディスプレイへの転送に忙しくしている間、CPUは入力を受信し処理し続けることができるので、ユーザーは入力遅延を感じずに済む。 ソフトウェア情報 「paint.net」・【著作権者】 dotPDN LLC、Rick Brewster 氏、contributors ・【対応OS】 64bit版のWindows 10/11およびWindows Server 2022 ・【ソフト種別】 フリーソフト(寄付歓迎) ・【バージョン】 5.1(24/11/12)
窓の杜,樽井 秀人