与党が主導する「減税先送り」まだ挽回できる国民民主党、補正予算の組み替えで対抗を 党税調ではなく国会で議論できる
【日本の解き方】 「年収103万円の壁」の引き上げや、ガソリン減税を先送りしようとしている自民党など与党に対し、国民民主党側はどんな手を打てるだろうか。 【イラストで解説】世帯別の“持ち物資産” 単身は179万円、1世帯の平均は 11月22日に閣議決定された経済対策では、いわゆる「103万円の壁」について「2025年度税制改正の中で議論し引き上げる」とした。ガソリン減税については「自動車関連諸税全体の見直しに向けて検討し、結論を得る」とされている。自公と国民民主の3党合意に基づくものだ。 これが先送りの根拠だ。来年度税制改正で行うので、実施は基本的に再来年の確定申告になる。国民民主党も甘い3党合意をしたものだが、今は臨時国会中なので、まだ挽回できるチャンスはある。 それには、所得税法改正と補正予算の組み替えで対抗すればいい。補正予算は、能登半島復旧対策や所得税基礎控除引き上げによる減税(いわゆる103万円の壁対策)などを盛り込み、すでに出ている補正予算案と同額とするのがいいだろう。 この方法のメリットは、税について、党税調ではなく国会で議論できる点だ。 税と民主主義を表す言葉として「代表なくして課税なし」がある。18世紀後半の米独立戦争は、代表者を母国の英国に送れないのに不当な課税があることに納得できないということで始まった。その反対運動の中で生まれた言葉だ。 自民党税調は「インナー」と呼ばれるほど「密室」であり、民主主義のプロセスにふさわしくない。党税調で議論するより、今国会でオープンにやった方がいい。 もちろん、財務省は同省出身議員が党税調インナーの要職を占めているので、そこで押さえ込みたいだろうが、それでは国民にはわけのわからないまま、減税の先送りになってしまう。経済対策としても、減税を入れて景気浮揚を図るべきだ。 なお、最近、システムのせいにして、基礎控除の引き上げがすぐにできないという政治家がいる。さぞかし財務省からのレクをしっかり受けたのだろうが、それは事実ではない。だいたいシステムについてよく知らない人が言うのはおかしいのだが、基礎控除の変更は「システム改修」ではなくて「設定変更」なので簡単だ。 いずれにしても、国会で議論せよという筆者の意見は、形式的には3党合意に反するかもしれない。だが、国会は国権の最高機関なのだから、できないはずはない。なにより石破茂首相(自民党総裁)が決断すればいいことだ。