盲目のGT-Rオーナー【3】小さなパーツ1つでも、自分で取り付けたという達成感
【ハコスカとケンメリ|1971年式 日産 スカイラインHT 2000 GT-R Vol.3】 【画像19枚】ツーリングに出かけるときの運転は、GT-Rを通じて知り合った仲間たちや地元の友人にお願いしている。GT-Rの音と匂い、振動を感じるのが楽しみだそうだ。フロントシートは左右ともレカロLX-Mシートに交換し、表皮をダッツンバケット風に張り替えている。同時にリアシートの張り替えも行い、全体の質感をそろえ、美しい状態に整えている ハンディキャップを持ちながらもGT-R趣味を続けるオーナーは、持ち前の積極性からパーツハンティングにも旺盛な意欲を見せる。 今のパソコンや携帯電話には、画面に表示される文字を読み上げてくれる機能があることも、オーナーにとって助けとなっている。 メールが届くと、それを読み上げてくれるのだ。この機能を利用して、オークションサイトでパーツを落札するのも楽しみの1つだという。 「どこに使う部品かとか、サイズは問題ないのですが、色だけは困ります。赤といっても、どんな赤なのかは人によって感じ方が違いますからね。そこで、取り引きする相手の方には自分の病状を正直にお話して、視力があった頃の記憶をたぐり寄せて、フェラーリのような発色のいい赤なのか、くすんだ赤なのかなど、説明していただいています。どんな小さなパーツやボルト1本であっても、自分で取り付けたという達成感を味わうことができます。それも旧車ならではの醍醐味です」 そして、オーナーが一番大切にしているのは、人とのつながりだ。仲間と出かけるドライブの際に運転してもらったり、車検に出したりと、だれかの手は必ず借りることになるからだ。 「ただGT-Rが好きっていうだけでなく、実際に所有しているということがきっかけになって、交流の輪がものすごく広がりました。友人にハンドルを握ってもらい、助手席に乗りながらですけど、遠くは新潟、北海道にまでツーリングに出かけたことがあります。日常でも、自分から気軽に出かけることはできませんが、遊びに来てくれる友人が増えたことは、ひとえにGT-Rを所有していればこそだと思います。RSスタートの宮崎裕二社長、ラバーソウルの西講一郎社長、須藤自動車の須藤譲二社長、そして、オーナーの皆さんもよくしてくれるので、盲目を嘆くことなく、これからもGT-Rの音を聞き、パーツ交換をする生活を楽しんでいきますよ」 GT-Rは走らせるのが楽しいクルマなのはもちろんだが、運転できなくても所有しているということが、これだけのドラマを生んでいる。GT-Rの魅力は尽きることがないのだ。 初出:ノスタルジックヒーロー 2021年2月号 Vol.203 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
Nosweb 編集部
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