センバツ高校野球 東海大菅生、強豪に堂々 意地の打線、相手崩せず /東京
第95回記念選抜高校野球大会第10日の29日、東海大菅生は準々決勝で大阪桐蔭(大阪)に1―6で敗れ、センバツで初の4強入りはならなかった。三回途中から登板したエースの日当(ひなた)直喜(3年)が粘りの投球、打線は意地の1点をもぎ取るも、相手投手を最後まで打ち崩せなかった。前回大会優勝の強豪に堂々と立ち向かい、成長した姿を見せた選手たちに試合後、スタンドから大きな拍手が送られた。【加藤昌平、山口敬人】 相手は2年前の夏の甲子園で雨天コールド負けし、先輩たちが悔し涙を流した大阪桐蔭。選手たちは強豪に臆することなく立ち向かった。 前日に完投した日当の疲労を考慮し、先発したのは末吉陽輝(同)だった。父一順(かずゆき)さん(41)が「全力で一つでもアウトを取ってほしい」と祈る中、多彩な変化球を駆使して2イニング無失点と好投し、試合を作った。 三回に4点を失ったが、直後に打線が反撃した。3番・酒井駿輔(同)が内野安打、4番・北島蒼大(そうた)(同)が左前打でつないで1死二、三塁。6番・門間丈(同)が「点をどうしても取る」と犠飛を放って、1点を返した。待望の得点に、青いメガホンが揺れ、スタンドの応援団が「よーし!」と沸いた。 三回途中から登板した日当は「自分の投球を見せつけてやる」と強気に投球し、中盤に2点を失ったが7奪三振と粘った。チアリーディングで選手たちを応援するダンス部の脇山凜華さんは「自分たちの応援が少しでも力になれば」とポンポンを振った。 追加点を奪えないまま迎えた九回2死走者なしの場面。打席に立ったのは、これまでベンチから仲間を鼓舞し、チームをまとめてきた渡部奏楽(そら)主将(同)だ。応援が一段と大きくなる中、投げ込まれる一球一球をフルスイングしたが三振に倒れ、選手たちのセンバツが終わった。 チームは昨夏に現メンバーで始動した際、まとまりに欠ける面があったことから「史上最低」と呼ばれた。しかし、選手たちはこの日、最後まで諦めずに戦い、たくましい姿を見せた。同校を運営する菅生学園の島田幸成理事長は「悔しいが、夏も菅生らしい野球で勝ちにいってほしい」とエールを送った。 ◇団長、力の限り応援 ○…東海大菅生の応援団を率いたのは野球部員の古川拓未さん(17)。ベンチ入りは果たせなかったが、「チームのためになるなら」と団長を引き受けた。再開された声出し応援は2年前、夏の甲子園の出場時に練習したといい、「(当時は新型コロナウイルスの影響で)本番で披露できなかったが、その経験が役立った」と堂に入ったもの。この日の相手はその大会で降雨コールドで敗れた大阪桐蔭。「先輩たちの悔しさも背負って力の限り応援する」と気勢を上げた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇兄の背追い、リベンジ誓う 東海大菅生・沼沢梁成中堅手(3年) 2年前の8月17日。雨の甲子園で立ちすくむ兄の姿をスタンドから見た。大阪桐蔭に八回雨天コールド負けした当時のメンバーの一人が、2歳上の大学生大翔(はると)さん(19)だった。その姿を忘れず、この日の準々決勝に並々ならぬ決意で臨んだ。 野球を始めたのは大翔さんの影響だ。地元の山梨県で同じ少年野球チームに入団し、兄を追って東海大菅生に進学した。兄弟仲が良く、いつもLINE(ライン)でやりとりする。準々決勝の前には「結果よりも甲子園を楽しんで」というメッセージが届いた。 この日、大翔さんはスタンドに駆け付け、「チーム力でリベンジしてほしい」と後輩たちを見守った。ただ、試合は相手投手を打ちあぐねる苦しい展開で、沼沢も得意の足を生かせずに敗れた。 「甲子園は楽しむことができた。次は絶対勝つと兄に約束したい」。試合後にこう語り、夏へのリベンジを誓った。【加藤昌平】 〔多摩版〕