<バスケットボール>チーム消滅の危機から復活 旋風を巻き起こす和歌山トライアンズ
男子バスケットボールのトップリーグ、NBL(ナショナルバスケットボールリーグ)のウエスタンカンファレンスで好調をキープしている和歌山トライアンズ。前節まで9連勝とノリにノッており、首位のアイシンシーホース三河と激しい首位争いを演じている(25節を終えた時点で1ゲーム差の2位)。 現在、優勝争いを演じるほどの強豪チームだが、半年ほど前には、チーム消滅の危機に直面していた。前身はかつての名門・パナソニックトライアンズ。本社の業績悪化に伴い、パナソニックはバスケットボール部の休部を決定した。この報を受け、多くの存続を願うファンが反応し、集められた署名は3万人を超えたという。 しかし、このご時世、受け入れに手を挙げる企業など、すぐにはみつからない。存続への残された道はプロ化しかなかった。とはいうものの、簡単な話ではない。課題は山積みだった。 まずは資金調達。チームを継続して運営するために必要な資金を、実業団のような1社スポンサーに依存するのではなく、複数社のスポンサーを募るなどした。そして“プロ”として、プレーしてくれる選手の獲得。企業の一社員として、生活が保障された中でプレーしていた実業団の選手にとって、プロ入りというのは大きなリスクを伴う。野球やサッカーのような高額年俸を得ることができるわけではなく、選手寿命も決して長いとは言えない。それでも、夢を抱いたメンバーが集結した。 さらに練習、試合会場の確保。これには、和歌山に本社を置くノーリツ鋼機が福利厚生施設として所有していた体育館を、格安での貸与を申し出てくれた。それだけでなく、リボンビジョンなどバスケットボールの試合の演出に欠かせない設備をはじめ、各箇所のリニューアルも施してくれた。こうした努力が実り、リーグを動かし、晴れて和歌山トライアンズは誕生した。実は、同チームは現在、和歌山県内では唯一のプロスポーツチームだ。 企業だけでなく、多くのボランティアも手を貸してくれている。中でも広報部門を請け負う和歌山大学の学生ボランティアの存在が心強い。学内の広報誌などを制作している「PRism」のメンバーが、ホームページのオフィシャル写真撮影からスコアつけ、会見でのコメント起こしやコラムの執筆など、本職顔負けの働きぶりを見せている。「トライアンズの魅力を伝えることが、勉強になっています」と牧野優生さんは生き生きと話す。