「痔ろう」は治療しないと『がん』になることも 手術の流れや術後の経過を詳しく解説
男性に多く発症し、場合によっては手術になることもある痔ろう。放置していると、まれにがん化することもあるそうです。 【イラスト解説】「肛門ポリープ」はがん化するの?「大腸ポリープ」との違い 医師に手術が必要と言われ、ドキドキしている人もいるかもしれません。手術はどのような流れで行われるのか、しらはた胃腸肛門クリニック横浜の白畑先生に詳しく教えてもらいました。
痔ろうとはどんな病気? 治療には手術が必要?
編集部: 痔ろうとはどのような病気ですか? 白畑先生: 痔ろうとは痔のタイプのひとつであり、肛門周囲の皮膚と肛門の内側をつなぐトンネル(ろう管)ができる痔のことをいいます。 編集部: なぜ、痔ろうが起きるのですか? 白畑先生: 主に、下痢などによって肛門の組織に細菌が入り込み、感染を起こすことが原因で発症します。女性に比べ、男性に多く見られるとされています。 編集部: どのような症状が出るのですか? 白畑先生: 多くのケースで以下の症状が見られるとされています。 ・肛門の周囲が腫れて、ズキズキした痛みがでる ・発熱(38~39℃)する ・おしりが熱っぽい ・痛くてイスに座れない ・トイレットペーパーや下着に膿が付く など 編集部: 自然に治るのですか? 白畑先生: 痔ろうの治療は、一度できてしまったら基本的には手術になりますが、自然に治癒するケースもあります。そのため発症から2~3か月間経過を見て、その間に、生活習慣の改善や薬物療法なども並行して行います。それでも症状が改善しない場合は手術になります。 編集部: 痔ろうを放置するとどうなりますか? 白畑先生: 痔ろうの原因は細菌感染です。そのためこれを放置すると細菌感染を繰り返すことになり、症状が複雑化して、なかなか治りづらくなってしまいます。 また、複雑痔ろうのような重症の痔ろうを長期にわたって放置すると、まれにがん化することがあります。そのため、痔ろうが疑われる場合にはしっかりと治す必要があります。
痔ろうの治療にはさまざまな術式がある
編集部: 痔ろうはどのようにして治療するのですか? 白畑先生: 簡単にいうと、手術ではろう管の入り口となる原発口と、出口となる二次口を塞ぎます。病態により、切開開放術、ろう管くりぬき術(括約筋温存術)、シートン法から選択します。 編集部: それぞれどのような手術か、教えてください。 白畑先生: 切開開放術はろう管を切除し、縫合せずにそのまま開放創とする手術のことをいいます。痔ろうが浅かったり、肛門の後ろの方に痔ろうがあったりする場合に行われます。 編集部: ろう管くりぬき術とはどのよう手術ですか? 白畑先生: ろう管をくり抜き、細菌の入り口を縫合する手術のことをいいます。痔ろうが深かったり、肛門の前方に痔ろうがあったりする場合に行われます。肛門の前方は括約筋が発達していて切開による括約筋へのダメージが大きいため、くりぬき術が推奨されます。 編集部: シートン法とは? 白畑先生: ろう管に輪ゴムを通し時間を掛けて絞っていき、ゴムの力でゆっくりろう管を開放する手術のことをいいます。侵襲が少ないというメリットがありますが、治癒まで時間がかかったり、再発が多かったりする術式です。 シートン法はクローン病の痔ろうや炎症が強く周囲組織が脆弱な場合に切開開放術やくりぬき術では治癒困難な場合に適応されます。 編集部: いろいろな手術があるのですね。 白畑先生: 痔ろうの手術で大切なのは、できるだけ肛門の機能を温存するということです。ろう管は肛門括約筋という筋肉をまたいでおり、手術にはこの筋肉をどう処理するかが重要になります。 肛門括約筋は肛門を閉じる働きをする筋肉であり、手術によってこれを傷つけると肛門の機能が損なわれてしまうことがあります。そのため手術ではできるだけ肛門括約筋を傷つけず、侵襲性の少ない方法で行うことが必要です。