「痔ろう」は治療しないと『がん』になることも 手術の流れや術後の経過を詳しく解説
手術の流れ
編集部: 痔ろうの手術は、どのような流れで行われるのですか? 白畑先生: まずは事前の検査として、肛門機能に不安のある場合は肛門機能内圧検査を行います。これは肛門内の圧を測定し、肛門を閉める力がどれくらい強いかなど、肛門の機能を調べる検査のこと。治療方針を決めるのに重要な役割を果たします。 そのほか肛門超音波検査などを行って、痔ろうの走行や状態などを調べることもあります。また、血液検査などで全身の健康状態を確認します。 編集部: まずは検査が必要なのですね。 白畑先生: はい、そのほか内視鏡などお腹の検査を行う場合もあります。特に若い人の場合、「痔ろうかと思ったら、実はクローン病だった」ということもあります。そのため、ほかの疾患と鑑別するために、内視鏡検査を行うこともあります。 編集部: 手術の当日はどのような流れになりますか? 白畑先生: 基本的に、手術は日帰りとなります。手術の前日は軽い食事制限が指示され、手術の当日は朝から絶食になります。手術は静脈麻酔と局所麻酔または仙骨硬膜外麻酔の組み合わせによって行われ、約15~30分で終了します。 編集部: 日帰りで手術できるのはいいですね。 白畑先生: ただし、トンネルが深く複雑に広がっている複雑痔ろうの場合には、入院手術が必要になります。入院期間はだいたい1週間です。 編集部: 手術が終わったら、どうするのですか? 白畑先生: 手術後は回復室で休養し、術後1時間くらいで水分や食事の摂取が可能になります。また、術後2時間くらいで全身に問題がなければ、帰宅することができます。 編集部: 手術のあとに気をつけることはありますか? 白畑先生: 手術日は安静にして過ごしてもらいますが、翌日以降、日常生活への復帰が可能です。ただし、手術のあとで注意が必要なのは、痛みと出血です。術後は便を柔らかくするため、緩下剤を服用しますが、それでも術後1週間~10日間は出血があります。 指示された日に外来を受診し、術後の経過を見せてもらいますが、いつまでも痛みや出血がおさまらないなど、異常が見られる場合には早めに受診するようにしましょう。 編集部: 痛みや出血があるのですね。 白畑先生: はい。そうしたリスクを踏まえ、当院もそうであるように、あらかじめ24時間体制でフォローアップを行っている医療機関を選ぶと安心です。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 白畑先生: 痔ろうは自然治癒することが少ない病気であるため、発症したらなるべく早めに専門の医療機関を受診し、早めに治療開始することをお勧めします。 ごく稀ですが、長年痔ろうを放置することで「痔ろうがん」を発症する人もいます。そうした事態にならないよう、できるだけ早めに医師の診察を受けるようにしましょう。