「妊娠で辞めるつもりだった」岩清水選手が今もピッチで輝く原動力になった母の「言葉」と「引退時の夢」
── ご主人の存在も大きいですね。 岩清水選手:自分ひとりではどうしてもできないことがたくさんありますから、そういった意味でも本当に心強い存在です。夫は長男が生まれてすぐに、ママだけしか育児ができないということにならないように気をつけてくれていて。特に私の場合は復帰したいと明言していたので、最初から育児にも積極的でした。もちろんそれは今も変わりません。最近も遠征で自宅を不在にしたこともあったんですが、私がいなければいないで長男は夫にべったりでママを求めて泣くこともないらしいので。ただ、私が帰った瞬間にパパはもういらないになっちゃうんですけどね(笑)。
── 出産や育児の経験が、アスリートとしてプラスに働いていることはありますか。 岩清水選手:長くプレーしてきたなかでいろんな方々に支えていただいていることは常々感じていますが、家族のためにというモチベーションでプレーするのはすごく新鮮だし、大きな活力になっていますね。
■息子の記憶に残らなくても、現役を引退する時に… ── 息子さんのためにも、より長く現役でプレーしたいという思いもありますか。 岩清水選手:私ももう30代後半なので、子どものためにという思いもありますが、それ以上に、自分の体と向きあいながら、いちアスリートとしてという気持ちが大きいですね。長男が私がプレーしている姿を覚えてるぐらいまでやりたいけれど、小学生までというのは体力的にも厳しいでしょうし、幼稚園の頃の記憶は…ないですよね。だからせめて写真として残ればいいかな(笑)。
── これから岩清水選手が叶えたい夢はどんなことでしょうか。 岩清水選手:現役を引退するときに子どもが手紙を読んでくれたら一番嬉しいです。手紙とまでいかなくても、何かしらのメッセージをひと言かけてもらえたら嬉しいかな。それが今の目標だったりはしますね。 ── 後輩選手の中でも現役中に出産を選択される方も増えてくるかもしれません。後輩に向けて何かメッセージを送るとしたら? 岩清水選手:私が妊娠や出産をするときに知りたいなと思ったときに情報がなかった分、後輩たちが出産して現役復帰を目指したいとなったときには、その情報源になったり、アドバイスできればと思っています。そして、今後そういった環境がさらに整って、より認められるようなリーグ、女子サッカーでもあってほしいなと強く願っています。
PROFILE 岩清水梓選手 プロサッカー選手。16歳でリーグ戦デビューを果たし、2006年に日本代表に初選出。3度のW杯と2度の五輪を経験。2011年W杯ドイツ大会で優勝、2012年ロンドン五輪で銀メダル。3月29日に『ぼくのママはプロサッカー選手』(小学館クリエイティブ)を出版。 取材・文/石井宏美 写真提供/TOKYO VERDY
ちゃんと 編集部