a16zクリプト、「2025年に向けた7つのビッグアイデア」を公開。分散型ガバナンスのトレンドにも言及
a16zクリプトが2025年の展望を公開
米大手ベンチャーキャピタルa16z(アンドリーセンホロウィッツ)の暗号資産(仮想通貨)部門であるa16zクリプト(a16z crypto)が、2025年のクリプト(暗号資産・ブロックチェーンの総称)業界の展望を1月6日公開した。 a16zクリプトが公開した「7 Big Ideas for 2025(and more trends to watch):2025年に向けた7つのビッグアイデア(その他注目すべきトレンド)」で挙げられたは次の7項目だ。 ・企業によるステーブルコイン支払いの受け入れが増加するだろう ・各国が国債のオンチェーン化を検討 ・米国では、ブロックチェーン・ネットワークの新しい業界標準である「DUNA(デューン)」の採用が進むだろう ・ビルダーはインフラを再実装するのではなく、再利用するようになる ・暗号資産業界がついに独自のアプリストアを獲得し、ディスカバリーを行う ・暗号資産所有者が暗号資産ユーザーになる ・「ワイヤーを隠す」ことがweb3のキラーアプリの先駆けとなる 以下に各項目の解説の概略を記載する。 ●企業によるステーブルコイン支払いの受け入れが増加 a16zクリプトは、2025年には企業による大規模なステーブルコインの実験の波が訪れると予想。レストラン、コーヒーショップ、雑貨店などといった、ブランド力があって固定客を抱え、決済コストに頭を痛めている中小企業がまず、クレジットカードからステーブルコインに切り替えるとした。 これはステーブルコインを使えばクレジットカード詐欺や取引手数料を避けられるとの考えからだ。 またa16zクリプトは大手企業によるステーブルコインの採用も進むとし、もしステーブルコインの採用が急速に進めば、企業は決済プロバイダーを排除し、最終利益に直接2%を上乗せするだろうと予想している。 ●各国が国債のオンチェーン化を検討 政府債券のオンチェーン化により、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の監視に関する懸念なしに、政府保証付きの利付デジタル資産が創出されることになるという。 これらの商品は、DeFi(分散型金融)の貸付や派生プロトコルにおける担保利用の新たな需要源を開放するため、一部の国では政府債券のオンチェーン発行の試験運用が行われる可能性があるとa16zクリプトは述べた。 また米国では、SECが予定している伝統的なインフラを通じた証券決済義務付けの予定を踏まえて、ブロックチェーンが債券取引の透明性、効率性、参加率を向上させる可能性について、より活発な議論の交換が予想されるとのことだ。 ●米国でブロックチェーン・ネットワークの新しい業界標準である「DUNA」の採用が進む a16zクリプトは、ワイオミング州が認めたDAO(分散型自律組織)を法的に扱うための制度「DUNA」に言及。「DUNA」を分散型法人構造に組み込むことで、暗号資産プロジェクトらは、DAOに法的正当性が裏付けられるとした。 2025年に暗号資産エコシステムの促進と進歩の加速化を図る構えの米国において、「DUNA」は米国のプロジェクトの標準になるだろうとa16zクリプトは期待している。 ●ビルダーはインフラを再実装するのではなく、再利用するようになる a16zクリプトは、2024年はブロックチェーンスタック全体でインフラの再実装が行われてきたとし、その結果、専門的な機能性においては若干の改善が見られたものの、より広範な機能性や基本機能においては不足している場合が多くあったとa16zクリプトは指摘。 2025年にはより多くのチームが他者の貢献を活用し、コンセンサスプロトコルや既存の担保資本から証明システムに至るまで、より多くの既製のブロックチェーンインフラストラクチャコンポーネントを再実装するようになることをa16zクリプトは期待するとした。 またこれにより、開発者が自社製品/サービスの価値を差別化することに徹底的に集中できるとのことだ。 ●暗号資産業界が独自のアプリストアを獲得し、ディスカバリーを行う アプリケーションに関しては、World(旧Worldcoin)のアプリ内で展開される「ミニアプリ」やソラナモバイルフォンのdAppストアといった、既存のアプリストアに依存しない形の新たな流通経路が生まれていることに言及がされた。この動きは従来のApp StoreやGoogle Playのような集中型のプラットフォームにおける審査の厳しさや手数料構造から解き放たれ、暗号資産サービスの普及を促進するという。 また一方でメッセージングアプリやWeb2で大きな流通を誇るアプリ等、すでに流通している製品がある場合、それをオンチェーンに移行するのは困難だというが、(ただし例外としてTelegramのTONネットワークを挙げている)2025年には、このような移行がさらに多く見られるようになるかもしれないとの期待が込められた。 ●暗号資産所有者が暗号資産ユーザーになる 政治活動及び金融運動の面でも2024年に暗号資産は大きな進展を見せており、2025年には、暗号資産はコンピューティング運動としてさらに発展するはずだとa16zクリプトは指摘。 また同社は、暗号資産保有者のうち、積極的に利用しているのは5~10%に過ぎないため、未利用の暗号資産保有者を積極的ユーザーに転換させるときが来ているとし、ブロックチェーンインフラが改善され続け、ユーザーの取引手数料が低下している今こそ暗号資産保有者である6億1700万人をオンチェーンに引き込むことができるとした。 一方、すでに登場している初期のアプリケーションは、コミュニティがユーザー体験やその他の改善にこれまで以上に重点的に取り組んでいるため、主流のユーザーにもよりアクセスしやすくなりつつあるとのことだ。 ●「ワイヤーを隠す」ことがweb3のキラーアプリの先駆けとなる 業界の技術的スーパーパワーこそがブロックチェーンを特別なものにしているが、同時にこれまで主流の採用を妨げてきたとa16zクリプトは指摘。 クリエイターやファンにとって、ブロックチェーンは接続性、所有権、収益化の扉を開くものだが、業界関係者の専門用語(「NFT」、「zkRollups」など)や複雑な設計は、この技術から最も恩恵を受ける人々にとって障壁となっているとした。 2025年にはクリプト業界は「配線を隠す」という理念を採用し、より多くの企業がシンプルに設計し、明確かつ簡単なコミュニケーションを行うようになると予想されている。 ●2025年の分散型ガバナンスのトレンド さらに、a16zクリプトは分散型ガバナンス全般の流れについても2025年は多彩な実験が同時多発的に行われると予測。これには、DAOや投資管理企業領域でオンライン投票の多様な手法が試される動きが含まれる。 具体的には投票者のデリゲートを助けるウェブサイトやAIによるデリゲート、参加率を高めるためのインセンティブの高度化、公共財への資金調達方法の工夫等の取り組みが想定されている。
あたらしい経済編集部