若手選手にとってオフシーズンの「飛躍の機会」に。アジアウィンターリーグ
若手有望選手の「登竜門」だった
新型コロナ禍前までは、AWBは、NPBの若手選手にとって「登竜門」的な存在だった。 2016年のAWBでは、ウエスタン・リーグ選抜のオリックス、吉田正尚が18試合54打数30安打6本塁打29打点、打率.556で最優秀打者に選ばれた。現地の新聞では「小さな大打者現る」と大々的に取り上げられた。 2017年はイースタン・リーグ選抜のDeNA佐野恵太が、19試合64打数25安打5本塁打18打点、打率.391を記録し、MVPとなった。 2018年にはイースタン・リーグ選抜のヤクルト、村上宗隆が19試合58打数13安打、打率.224ながら最多タイの4本塁打トップの15打点を記録。同じくイースタン選抜のロッテ、安田尚憲は、19試合58打数18安打1本塁打13打点、打率.305を記録。高卒1年目19歳の2人の活躍は、現地新聞で大々的に取り上げられた。 またJABA(日本野球連盟、社会人野球)選抜選手からは、毎年、翌年のドラフトで指名される選手が出ている。 2019年のAWBでは、JABA選抜のトヨタ自動車、栗林良吏が、6試合14.1回を投げ、4セーブ、防御率0.63を記録。栗林は翌年、ドラフト1位で広島に入団している。 現地メディアのAWBへの注目度は高い。特に日本人の若手有望株に対してはメディアは大きく取り上げている。この大会で活躍した選手がNPBのスター選手に駆け上がることが多いことを知っているからだ。
選手の派遣方針を一部変更
2024年は「NPB紅組(ソフトバンク、中日、阪神、DeNA)」「NPB白組(巨人、オリックス、ヤクルト、西武)」、「CPBL山組」「CPBL海組」、そして「JABA選抜」の5チームが参加した。 昨年以降、NPBは、派遣する選手の派遣方針を一部変更したようだ。 コロナ禍前までは、高卒、大卒でドラフト上位指名で入団した、トッププロスペクト(超有望株)を派遣してきたが、2023年以降は育成選手や、ドラフト下位の選手を中心に派遣している印象がある。 近年のNPBは、オーストラリアやメキシコ、カリブ海沿岸地域などで行われるウィンターリーグに選手を派遣するようになった。2024年からは西武、楽天、DeNAが沖縄のジャパンウィンターリーグにも選手を派遣した。台湾、AWBに集中して有望選手を派遣する必要性はやや薄れたと言うところだろうか? あるNPB球団のコーチは 「台湾へは、シーズン中あまり試合出場の機会がなかった育成選手や、故障明けで出場試合数が足りなかった選手を派遣している。試合結果よりも経験を積ませることが中心になっている」 と語る。 一方でJABAは、ドラフト候補になる有力選手を以前と変わらず派遣している。このためもあってか、2024年はJABA選抜が優勝している。