リオ五輪始まりましたが… 新国立競技場200億円『命名権』どうなった?
安定財源として期待 契約金額の妥当性は手探り状態
ただ、日本では緒に就いたばかりのネーミングライツだけに、そのスポンサー料の妥当性を判断することは難しいものがあります。ネーミングライツの導入は日本でも増えてきていますが、アメリカなどに比べると歴史は浅く、うまく機能しているとは言い難い状況です。契約金額の妥当性も手探り状態なので、ネーミングライツの導入をためらう自治体、スポンサーに名乗りを挙げたくても二の足を踏んでしまう企業もあります。 東京都調布市にある味の素スタジアムは、2003(平成15)年に公共の大型競技場では日本初のネーミングライツを導入しています。味の素スタジアムは5年間で12億円、2期目は6年間で14億円の契約を結びました。そして、2013(平成25)年には国内最長となる3期目の契約更新をしています。3期目は、5年間で10億円の契約です。 味の素スタジアムがネーミングライツを導入した当時、大型公共施設でネーミングライツを導入している事例はありませんでした。なぜ、味の素スタジアムはネーミングライツの導入に踏み切ったのでしょうか? 味の素スタジアムを管理・運営している東京スタジアム総務部総務課の担当者は、こう話します。 「東京スタジアムはもともと独立採算制で運営される方針になっていました。野球と違い、サッカーは毎日試合が開催されるわけではありません。ホームゲームは年間30試合前後しかありません。そうなると、興行収入のほかにも安定財源が必要になります。そこで、最初からネーミングライツを導入することが検討されていました。しかし、国内にネーミングライツの前例はありません。そこで、関係者一同は海外の事例を参考にネーミングライツの導入作業を進めました。」
スポンサー名がついているからこそ 地域に愛される施設づくりに努力
ネーミングライツの導入を検討する中、スタジアム側は約90社と交渉。その結果、味の素にスポンサーが決まりました。ネーミングライツの導入に際して、スタジアムの管理者は特に地域貢献にこだわりました。スタジアムは人が多く集まる施設なので、試合開催日はゴミが大量に出たり、騒音で近隣住民の静かな住環境を脅かしたりします。スタジアムは迷惑施設でもあるのです。そのため、味の素スタジアムは常に地域に愛されるスタジアムを意識しています。 「味の素スタジアムでは、毎年“感謝デー”を開催し、地域住民から愛されるスタジアムづくりに力を入れています。そのほかにも、調布市や隣接する三鷹市、府中市の広報誌にスタジアムで開催する試合やイベントのお知らせを掲載しています。イベントを周知することで、多くの市民がスタジアムに足を運ぶようになります。足を運んでもらえれば、スタジアムが地域の資源であるということを認識してもらえますし、利用してもらうことによって愛着が生まれるからです。」(同) さらに、味の素スタジアムという名前を浸透させるため、最寄り駅となる飛田給駅の副駅名称を“味の素スタジアム前”にしてほしいと京王電鉄にも請願。飛田給駅は、2003(平成15)年に副駅名称を味の素スタジアム前に変更しています。現在、バス停や道路標識、案内板、そのほかにも近隣のコンビニ・ファミレスの店名にも「味の素スタジアム前店」といった表記が見られます。確実に、味の素スタジアムという名前が地域に根づいているのです。