「コレステロール値は少し高めがいい」はもはや常識。反対に下げたら危険と心得よ
若々しさの重要な材料
また、コレステロールは、男性ホルモンや女性ホルモンの材料にもなります。性ホルモンは若々しさを保つのに大事な働きをしています。 特に、男性は、男性ホルモンが不足すると、女性と比べものにならないほど老けこんでしまいます。性欲だけでなく、意欲が衰え、筋肉量が減り、人づきあいが億劫になって、記憶力や判断力も衰えていく。ヨボヨボ老人になりたくなければ、男性ホルモンをつくるコレステロールは減らしてはいけないのです。 年をとると「どうせオレなんか」といじけた気持ちになったり、「何もできなくなって不甲斐ない」などと自分を責めたりすることが増えます。それは、幸福感や意欲、心の安定とかかわりのあるセロトニンが年齢とともに減ってくるからです。 コレステロールは、脳にセロトニンを運ぶ働きもあるとされているので、コレステロールが減れば、脳内のセロトニンの量も減り、はつらつとした感情や心の若々しさも失われ、最悪の場合、うつ病になってしまいます。コレステロール値が高い人ほどうつになりにくいという報告がありますが、長年、高齢者を診てきた精神科医としても納得できます。 どうですか、コレステロールはこれほど重要な役割をもっているのです。
自殺、事故、がんのリスクが大きく上がる
欧米の追跡調査データ6本を分析した論文は、「薬や食事療法でコレステロール値を下げると、心臓病のリスクは減るけれども、自殺、事故、がんのリスクが大きく上がる」と結論づけています。 これまで日本人は脳卒中や心筋梗塞を減らすことばかり考えてきました。1970年代までは脳卒中が最も多い死因でしたが、今はがんが約24%と全体の4分の1近くを占めています。脳卒中や心筋梗塞の予防だけしていればいいというわけではなく、全身を視野に入れた医療が求められています。 それでも循環器科の医者が自分の狭い立場にこだわり、「コレステロール値を下げましょう」と薬を処方するなら、「私はがんやうつになるほうが怖いので、コレステロール値は下げたくありません。どうしたらいいですか?」と聞いてみるとよいでしょう。医者の受け答えによっては、別の医者に変えてもいいと思います。
和田 秀樹(精神科医)