「コレステロール値は少し高めがいい」はもはや常識。反対に下げたら危険と心得よ
50年前に広まったコレステロール害悪説
コレステロールが健康を害するという説が世界中に広まったのは、アメリカのフラミンガム研究がきっかけでした。この研究は、マサチューセッツ州フラミンガムに住む男女5209人を対象に、1948年から80年まで行われました。 この研究の途中経過で、心筋梗塞の発症にコレステロールがかかわっているらしいということが見えてきました。それは当時、最新の医学として日本でも受け入れられ、コレステロール害悪説が定着していったのです。
すべての年代でがん死亡率が下がる
しかし、93年に報告されたフラミンガム研究の最終的な報告では、これまでとは反対にコレステロールのよい側面が見えてきました。血液中のコレステロールが1mg/dl上がると死亡率がどう変化するか、年齢別に調べた研究で、そのことがわかります(表)。 この研究によると、たしかに心筋梗塞などの冠動脈性心疾患は、コレステロール値が上がると40~70歳で死亡率が高まります。しかし、80歳では死亡率が下がっていることにお気づきでしょうか。弁膜症や心不全などの非冠動脈性心疾患も、死亡率が上がるのは40歳のみ。50~80歳ではむしろ死亡率は減っています。さらに、がん死亡率ではすべての年代で、コレステロール値が高いほうが死亡率が低いという結果になりました。 つまり、「コレステロールは害悪だ」という説が該当するのは、一部の年代の、一部の病気にかぎったことだったのです。そのことをフラミンガム研究の最終結果でも示しているのに、日本はいまだに50年以上前の「コレステロール害悪説」をすべての年代の人に強いています。不思議としか言いようがありません。
コレステロールが丈夫な細胞膜をつくる
そもそもコレステロールというのは、人間を含めて動物の体を形づくる脂質の一種であり、生きていくために欠かせないものです。 私たちの体は約60兆個の細胞からできていますが、その細胞を包み、外部の有害なものから細胞を守る丈夫な細胞膜をつくっているのもコレステロールです。 そのため、コレステロールが不足すると細胞の再生がうまくいかなくなり、内臓や筋肉、肌などあらゆる部分の老化が進みます。ちなみに、「善玉」「悪玉」と呼ばれるものも、すべて同じ材料でできています。 前述したフラミンガム研究で、コレステロール値が高いほど、がんの死亡率が低くなるという結果が出ましたが、これはコレステロールが免疫細胞の重要な材料のひとつであるためと考えられます。免疫細胞のひとつNK(ナチュラル・キラー)細胞は、がん細胞のもとになる“できそこないの細胞”をやっつける働きがあります。