小4で哺乳瓶を使いたがる子は「ママからミルクもらえなかった」と呟いた…親と離れた子が"大人を試す"理由
親から離れて里親や養親のもとで育つ子どもたちは、どのようにして養育者との関係を形成するのか。日本女子大学人間社会学部教授の林浩康さんは「被害体験や喪失体験を抱えた子どもは、養育者との関係や許容範囲などを確かめる『試し行動』や、『赤ちゃん返り』といわれる退行を起こす場合がある」という――。 【この記事の画像を見る】 ※本稿は、林浩康『里親と特別養子縁組 制度と暮らし、家族のかたち』(中公新書)の一部を再編集したものです。 ■養育者との関係や許容範囲などを確かめる「試し行動」 生みの親から引き離され、新たな養育者と関係を形成することの子どもへの影響と、それに伴う子どもの困難を理解した上で、子どもの育ち直しの過程を適切な対応により確保する必要がある。被害体験や喪失体験を抱えた子どもは、安全かつ安心な環境に身を置くことで、養育者との関係や許容範囲などを確かめる「試し行動」や、「赤ちゃん返り」といわれる退行を起こす場合もある。 養育者がこうした行動を否定せず受け入れることは、子どもと養育者との関係形成上、必要不可欠である。養育者として対応に苦慮するときや、対応方法が見つからないときは、公的養育者として他者に協力を求めることが大切である。実子を養育したなどの過去の養育経験が、むしろ育ち直そうとしている子どもの養育を妨げる場合もある。 不妊治療を経てようやく授かった実子でも、育児で余裕を失い、「思い描いていた生活と違っていた」などの悩みが出てくることも考えられる。子育てには喜びの反面、難しさがある。大変でも徐々に状況が上向くならばよいが、出口が見えなければ、大変さが増すばかりである。生みの親も里親も養親も、同様にそのような状況に陥ることがある。 ■支援を求めることは、養育者としての力量 ただ、里親や養親の場合、中途からの養育であるがゆえに、その危険性が比較的高いといえる。自分たちの意思で始めた養育だから、その大変さのすべてを自分たちで背負い込むといった考え方が、自身をさらに追い込む。養育が困難な状況になった場合、家庭内で抱え込むのではなく、速やかに他者の協力を求めることも大切である。養育者が養育について悩むことや思案することは、よりよい養育を目指すからこそである。支援を求めることは、養育者としての力量として捉えられる。 井上さん夫妻(仮名)は、受託した子どもを4年間里親として養育した後に養子縁組した。現在は日々元気に小学校に通っているが、最初の3年くらいは、試し行動、情緒不安、固執、不眠、過敏症があって悩まされた。児童相談所に相談すると、民間の子ども教室や地域の子育てセンターに通って、子どもと手遊びや身体の柔軟性を高める遊びをすることを勧められた。心がやわらぐような楽しい遊びを親子一緒にするうちに、親子関係もずいぶんと落ち着いた。