マイナ保険証 12月2日に本格移行 データに基づく質の高い医療などメリット 静岡県内は利用低迷「使ってほしい」
12月2日から健康保険証の新規発行が終了し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」の利用を基本とする仕組みに移行する。ただ、最長1年間は現行の健康保険証が利用でき、マイナ保険証を持っていない場合は保険証の発行元から交付される資格確認書で最長5年間は医療にアクセスできる。マイナ保険証によって過去の特定健診や処方薬に基づいた質の高い医療が受けられるなどのメリットがあり、県内の医療機関や薬局などは利用促進を進めている。 「副作用や禁忌のトラブルを防ぎ、安心して薬を提供できる」。静岡市駿河区のアリス薬局静岡店の竹内雄規薬局長は、マイナ保険証で併用薬などを確認できる利点を挙げる。薬手帳は不携帯であったり、持参していても過去の処方薬が記されたシールが貼り忘れていたりすることがある。薬手帳に記録がない注射歴や抗がん剤の投与歴なども確認でき、調剤や服薬指導に生かせるという。 現行の健康保険証が提示された場合は被保険者番号などを資格確認端末に手入力するため、入力ミスなどで診療報酬明細書の審査機関から返戻が一定数発生している。マイナ保険証の利用によって同店を含め全国的にも返戻件数が減少するなど業務の効率化が進む。 一方で、10月のマイナ保険証利用率は全国で15・67%、本県は17・96%と低迷する。同店では当初、患者から個人情報の閲覧範囲を危惧する声が多かった。医療情報に限定される点を説明し、徐々に利用者が増えていったという。同薬局グループの瀬角隆洋副社長は「今後も正しく情報を伝える必要がある。患者の役に立つので使ってほしい」と呼びかける。 静岡市葵区の鈴木内科医院は、患者の半数がマイナ保険証を利用する。鈴木研一郎院長は「(マイナ保険証のメリットなどを)丁寧に説明することで利用が広がっていった。初診時は顔写真の確認や顔認証の照合で本人確認の確実性も高まる」と話す。 現状は医療機関や薬局で電子処方箋が導入されていなければ、直近1カ月の処方箋は把握できず、医療情報を医療機関同士で共有する仕組みも作られつつある段階。だがいずれも整備が進む予定で、鈴木院長は「医療DXが医療の質の向上に寄与できるようになる」と期待する。
静岡新聞社