気鋭のマーケティング企業「刀」が、沖縄でアドベンチャートラベル会社を設立、その狙いと未来をトップに聞いてきた
やんばるの海と森で没入感のある旅を
今年4月には第一弾として、3泊4日の「やんばる、奇跡が生きる森へ」 ツアーを開始した。沖縄の自然信仰、集落の人々の暮らし、自然を生かすをテーマに、沖縄で古くから伝わるサバニ(舟)体験をはじめとしてやんばるの自然に入り込み、そこに生きる人々との出会いをツアーに盛り込む。 7月と8月には、夏休み企画として、親子を対象に2泊3日の「『 生きる力』をみがく親子旅 in 沖縄やんばるの海」を催行。うみんちゅとの出会いや体験を通じて多様な価値観を学ぶ機会を提供する。また、9月と10月には「サンゴの海、うみんちゅの祈り」ツアー を企画。海に関わる物語をたどり、うみんちゅの心の根幹にある海や自然への崇拝の心に触れる。 森と海、いずれのツアーも、同社が「導き手」と呼ぶガイドの存在が大きな特徴。アドベンチャートラベルのエキスパートであるスルーガイドと地域の魅力を伝える地元ガイドが参加者と自然や地域との橋渡しを担う。立見氏は「地域とつなぐ導き手の解説を聞きながら旅行をすると、地域の深いところまで見ることができる。付加価値を上げるという意味では大きな貢献ができると思う」と話す。 また、旅全体を通じた物語を伝えることで、より没入感のあるツアーにしていく。それによって、「ワクワク感が増し、知的好奇心も刺激される」との考えだ。さらに、アドベンチャートラベルの重要な要素である達成感にもこだわる。 少人数の募集という点も特徴の一つ。団体ツアーだが、「ある程度、自分でやりたいことができる人数」にすることで、現地の人と直接接触する機会も確保する。
沖縄に移住しコンテンツ開拓
OKINAWA ADVENTURESの特徴にも表れる立見氏の旅に対する考え方は、英国での留学時代に生まれた。留学当時、コッツウォルズや湖水地方にあるマナーハウス(中世ヨーロッパにおける荘園で、地主である荘園領主が建設した邸宅)の案内ツアーを日本人富裕層向けに企画できないかと考えていたという。「普通の日本人旅行者が体験できないようなディープな英国文化を味わってもらいたいという思いは、時を経て、沖縄のツアーに通じていると思う」と明かす。 ディープな体験を提供するためには、地域とのディープな関係が不可欠だ。沖縄アドベンチャートラベルでは、担当者が沖縄北部に移り住んだ。ツアー造成にあたっては、地元の人たちとの人間関係の構築から始めた。 立見氏は「現地担当者が地元の人と信頼関係をしっかりと築いて、その人たちからどんどん地域の情報を入手している。信頼関係がないと、地域の人たちは自分の過去や人生について赤裸々に語ってくれることはない」と話したうえで、「もちろん採算性はしっかり管理しなければいけないが、現地の担当者には、どんどん自由にやってもらいたい」と力を込めた。