「自己責任」が重すぎる──増える「子どもがほしくない20代」 #性のギモン
ロールモデルがないのが問題
福祉社会学が専門で、自身の子育ての経験をエッセイで発表している竹端寛さん(兵庫県立大学環境人間学部准教授)は、ロールモデルがないことも子どもを持つことを躊躇する原因になっているという。 「会社の先輩女性が、仕事と家事・育児で疲弊している様子を見たら、女性は怖気づきますよね。夫が1週間や2週間だけ育休を取って『イクメン』みたいな顔をされても、『いやいや、これからずっと大変なのに』と思うはずです」
なぜ女性ばかりに家事・育児の負担がかかるのか。ひとつには、まだ男性中心的な家事分担システムが残っているからだ。いまや夫婦ともに働くのが当たり前。それなのに、妻が家事労働にかけている時間が圧倒的に夫より長い。
「昭和型」の働き方を変える必要がある
日本の企業がいまだに「昭和型」であることも、共働き家庭の子育てを困難にしている。 「業務の徹底的な効率化をせず、長時間労働や、休暇が取りにくいなど、昭和的な働き方のまま人件費を削るため人だけを減らしている。すると1人抜けただけで、他の人に負担がかかる。今の若者は過剰なまでに『人に迷惑をかけてはいけない』という意識があるから、男性はとくに、子どもがいるからといって働き方を変えられない。結果的に女性の負担が重くなる。悪循環ですよね。 そういった日本型のシステムを変えて、安心して休みが取れ、他者に頼れる社会にすべきでしょう」 出産・子育てをリスクと感じてしまうのは「自己責任」の問題ではなく、社会構造の問題だ。ただ、最近の若い人は過剰に「自己責任」を感じる傾向にあるため、なかなかそれが社会の問題とは気づかない。それも、子どもを持つことを躊躇する原因のひとつだ。 「子どもはめっちゃかわいいし、毎日新しい発見がある」と語る竹端さん。 「子どもというままならない存在と暮らすことで、自分はそれまで自己責任という概念に縛られ、『昭和型』の働き方をしていたことにも気づいた。 若い男性にアドバイスするとしたら、パートナーの話を、途中で遮ったり中途半端なアドバイスや批判をしたりせずに、最後までじっくり聞くこと。夫婦も他人なので、女性が何に悩み、何を我慢しているか、きちんと話し合うことが大事です」