「自己責任」が重すぎる──増える「子どもがほしくない20代」 #性のギモン
ジェンダー不平等な家庭環境の影響
自分が育った家庭でのジェンダー不平等も、理奈さんの結婚観に影響を与えている。父親は仕事で深夜に帰宅することも多く、母親は家事、子育て、法事の料理、姑のケアなどを抱え込み、ストレスから鬱々とすることも多かった。 また理奈さんは痴漢に遭った経験もあり、防犯にも神経をとがらせている。女の子を産んだら、女性ならではの重荷を背負わせることになり、申し訳ないという気持ちを抱きそうだ。 「夫にそういう話をすると、『世の中には痴漢もいるし、男女差別も確かにあるけれど、そのせいで私の選択肢が狭まるのはもったいない』と言います。女として生きたことがないから、やっぱり理解してもらえないのかもしれません」 医療ソーシャルワーカーの鏑木美穂さん(26歳・仮名)は、高校2年の時に両親が離婚し、寂しい思いをしてきたので、早くパートナーを見つけて自分の家族を持ちたいという思いから24歳で婚活を始めた。ただし、子どもを持つことには積極的になれない。 「父親の悪口を言い、私に対して否定的なことを言う母に対して、反発していました。もし子どもを産んだら、連鎖して母と同じことをしてしまうのではないかと不安です」 家庭内で抑圧され、不満をためていた母親の姿が、結婚観に影響を与えているという。
キャリアの構築において子どもはリスク?
川村琴実さん(28歳・仮名)は、1年前から結婚相談所で婚活をしている。相談所に登録したのは、より堅実な相手を求めているからだ。ただし今のところ、子どもはほしくないと考えている。現在、製造業の会社の人事部門で働いていることもあり、女性にとって出産・子育てがキャリア形成の足かせになるという実感があるからだ。 「人事の立場としては、中途採用する場合、入社直後に産休・育休を取ったり子どものために早く帰ったりする可能性があるかどうか、やはり念頭におかざるをえません。前の部署で、育休を取った人がいて。人手不足なので負担が増えて、本当に大変でした」 育休を取った女性が復帰後、育児による労働時間の制約で従来のパフォーマンスが発揮できず、補佐的な仕事に回されたり、昇進が遅れたりする現実も見ている。確実にキャリアを積んでいきたい琴実さんは、子どもは仕事を続ける上でリスクになると考えている。 ただ何人かとお見合いをするなかで、少しずつ気持ちが変化してきた。 「育休を長く取りたくないし、仕事をセーブしたくない。そこを理解して、家事や子育てをイーブンに分担する意識がある人であれば、前向きに考えられるかもしれません」