【衆院選】区割り変更 代々の地盤手放した自民前職、新エリアで地元強調 野党は比例票の掘り起こしを重視 山口1区
「昨年12月に宇部市民になった。昔から、ここにいるんじゃないかと思う」。3選を目指す山口1区の自民党前職高村正大(53)の声がグラウンドに響いた。衆院選が公示された15日の午後。宇部市での出陣式に地場企業の従業員や県議ら約300人が集まった。同市の篠崎圭二市長もマイクを握り「宇部市民の候補。地元を代表して応援する」と言い切った。 衆院選山口1~3区の立候補者一覧(計9人の略歴) 1区は区割り変更で周南市が外れた。高村は旧徳山市長で衆院議員だった祖父、同党副総裁を務め12期で引退した父から引き継いだ地盤の周南市を手放す形となった。一方で旧3区だった宇部市が新たに加わった。 旧3区も旧1区と同様に同党が議席を守ってきた。2017年の前々回選までは河村建夫、21年前回選は林芳正が当選している。高村の宇部市の後援会幹部は「優位は変わらないが、宇部での知名度不足は否めない。河村さんや林さんを応援してきた人が『ロス』で離れ、投票しない懸念もある」と漏らす。 高村は「初めての場所で、活動せずに選挙を迎えられない」と3月、政治とカネの問題への視線が厳しさを増す中、宇部市のホテルで政治資金パーティーを開いた。石破内閣で外務政務官の続投が決まった後も「宇部市民」を前面に出して回る。 対する野党。立憲民主党、共産党、国民民主党がそれぞれ候補を立てて戦う。市民団体「市民連合@やまぐち」(市民連合)は前回選直後から野党一本化を目指し、立憲民主党、共産党、れいわ新選組、社民党、新社会党の5党派と会合を重ねたが実現しなかった。市民連合は立憲民主党新人坂本史子(69)と共産党新人三藤美智子(67)の双方を「応援」の形で落ち着いた。 共闘に至らない背景には、保守王国とされる山口での比例票の掘り起こしを重視する各党の思惑がある。 立憲民主党の陣営幹部は小選挙区に注力するとしつつ「地道に回ることが比例票にもつながる」と力を込める。坂本は公示日の出陣式で「全国でこの選挙を勝ち抜き、自公政権に代わる市民の政治を実現する」と声を張り上げた。 共産党県委員会は比例中国元職の議席獲得を最大の目標に掲げる。15日、県委員会幹部は街頭で「県内で5万5千の得票を目指す」と宣言。三藤も「『今回は共産党』を合言葉に集まった皆さんが伝えていってほしい」と繰り返した。 市民連合と距離を置く国民民主党も同様のスタンス。17日に山口市で同党新人野田陽志(48)の応援に立った党幹部は「野党が乱立し自民が強い。楽な選挙区ではないが比例票を掘り起こせば中国ブロックで初の議席が取れる」。野田は「私と党に1票を託してもらえれば手取りを増やす政策が実現できる」と訴える。=敬称略
中国新聞社