【相撲編集部が選ぶ九州場所12日目の一番】隆の勝が2敗目喫し後退。琴櫻、豊昇龍の2大関がトップ並走に
あすは挑戦者の気持ちに戻って、思い切り大関にぶつかってほしいところだ
霧島(押し出し)隆の勝 「いや~、こういうふうになっちゃうんだねぇ」という、北の富士さんの声が聞こえてきそうだ。 きのうまで、2人の大関に伍して先頭を走ってきた隆の勝が、その勢いはどこへやら、という相撲で敗れ2敗目。優勝争いから一歩後退した。 この日の相手は関脇の霧島。もちろん番付からいけば霧島のほうが上なのだが、今場所は隆の勝が絶好調なのに対して霧島は絶不調、さらには過去の対戦成績を見ても隆の勝の11勝2敗となれば、隆の勝が1敗をキープする可能性はけっこう高いかと思われた。 しかし、優勝争いのただなかでの一番は、やはり思い切りぶつかっていけた今までとは違っていたようだ。 隆の勝はこの日、霧島の変化を警戒したか、ちょっと様子を見るように立っていった。実際、霧島はやや左にずれて立ったので、頭を下げてぶつかっていかなかった隆の勝のこの判断は、ある意味では正しかった。正しかったのだが、結果的には、この慎重な立ち合いによって、今場所の隆の勝の良さである、立ち合いからの圧力、破壊力がほとんど消えてしまうことになった。 隆の勝はその後、懸命に突きを繰り出すが、霧島が嫌がって引くところまでの圧力はついにかけられず。この日の霧島は、無理に捕まえに行かずに、隆の勝の右手を横から払ってイナす作戦を、冷静に取り続けた。何度目かの突きの時にこれがハマって、隆の勝が横を向いたところで深いところで左の下手を取ると、そのまま横について攻め、最後は押し出した。無念の2敗目を喫した隆の勝は、首をひねりながら花道を引き揚げるしかなかった。 霧島はこれで6勝6敗。大関復帰への足場を固めるはずだった今場所は、初日から5連敗し、「いったいどうしちゃったの?」というスタートだったが、何とか五分まで戻してきた。残りをすべて勝って9勝まで持っていくことができれば、大関復帰への道も完全に振り出しに戻ることは防げるので、最後まで頑張りたいところだ。 【相撲編集部が選ぶ九州場所12日目の一番】2敗対決は霧島が琴ノ若に圧勝。優勝は豊昇龍破った熱海富士との争いに 「素早かったんで、突きがしっかり当たらなかった」と隆の勝。「立ち合いが合わなかったか」と問われ、「そうですね」と答えているので、あるいはあの立ち合いは相手を見ていったのではなく、単に立ち遅れただけだったのかもしれないが、いずれにせよ本来の形ではなかった。この1敗で優勝争いからは大きく後退となったが、あすの琴櫻戦に勝てば、まだ混戦に持ち込む道は残されている。 「(残りも)やることは変わらないので、集中してやります」 この日、星勘定で2人の大関より後ろに回ることになったため、14日目に豊昇龍戦が組まれるかどうかは分からなくなってきたが、とにかくあすは挑戦者の気持ちに戻って、思い切り大関にぶつかってほしいところだ。 これで優勝争いは、この日もそろって強い相撲を見せた琴櫻-豊昇龍の直接対決で決するという可能性が少し濃くなったが、ただどちらも、大の里戦を残しているので、まだどんな星で千秋楽の決戦を迎えるかは分からない。大の里は今場所は先場所ほどの調子ではないが、琴櫻、豊昇龍とも先場所は大の里にあまり抵抗できずに敗れているだけに、怖いことは怖いだろう。豊昇龍の14日目の相手は、隆の勝あるいは霧島と思われるが、ここがどうなるかも一つのカギになる。 さあ、先輩2大関の相星決戦か、それとももう一人の大関が情勢を動かすか。残り3日の大関戦は、どれも目が離せなくなりそうだ。 文=藤本泰祐
相撲編集部