イカリソウだけで180品種!川原田さんの植物愛が止まらない「夢はビルの屋上に山野草ガーデン」【私の植物偏愛記・5月号こぼれ話】
川:あと、木本ですが、山野草の愛好家にも好まれているヤマツツジも好きですね。もともと園内にツツジの品種が多くありました。大木もあって、興味もあったのですが、ほかの植物をいろいろ見ている間に枯らしてしまい......。
ツツジの仲間でも、昔はヤマツツジにはそれほど興味をもっていませんでした。でも、品種が少しずつ集まってくると、それとともに興味も出てきて、いまは50品種ほど園内に保存しています。
川:花木の話もしてしまったので、ついでにもうひとつ紹介させてください! クサボケって知っていますか? 編:初めて聞きました。庭木や盆栽などでよく見るボケとは違うのでしょうか? 川:ボケは中国原産のChaenomeles speciosaを指し、クサボケは日本原産のChaenomeles japonicaを指します。どちらも落葉低木で、花期も同じで、花もよく似ています。一般に、クサボケのほうが樹高は低く、横に枝を伸ばします。名前のとおり、草のように茂るイメージです。
昔は、そのへんの野山でクサボケをふつうに見ることができました。今では、手入れをされなくなって山が荒れたり、開発されてしまったりで、身近で自生している姿を見られることはほとんどありません。オレンジ色の花は春を感じさせてくれます。ヤマツツジと同じように、興味をもって調べていくとどんどん知らなかった品種が見つかって、今では50品種ほど集めています。
川原田さんもまだまだ「浅い」!?
編:ウェブとはいえ、そろそろ止めさせてください(笑) 「花木の専門家」というイメージが間違っていたことがよくわかりました。 川:こういう仕事をしていると「ご専門は?」とよく聞かれます。もちろん花木にも力を入れてやってきましたが、私はいつも「広く、浅くやっています」と答えるようにしているんです。父もそうでした。 編:「広く」はよくわかりますが、「浅く」でしょうか......? 川:私の「浅く」は「各植物のプロや専門家と話をして恥ずかしくない程度に浅く」という意味です。 編:それは「浅く」ないと思います(笑) 川:どれだけ勉強、研究しても、知らない種類や品種がまだまだあったり、栽培方法についても新しい発見があったりするのが植物です。私もまだまだ「浅い」なと思いますよ。何年つき合っていても、飽きることはありません。 川原田邦彦(かわらだ・くにひこ) 園芸研究家。茨城県で庭木や宿根草などの生産、販売、造園などを幅広く手がける。植物全般に詳しく、特にアジサイに造詣が深く、900品種以上を収集・栽培している。わかりやすい解説に定評がある。著書に『12か月栽培ナビ アジサイ』『よくわかる栽培12か月 フジ』(NHK出版)ほか多数。 ●『趣味の園芸』連載 「私の植物偏愛記」(2024年4月号~) 本誌で活躍する講師のみなさんに、「愛好家」としてのお話を聞いていきます。「こんな植物が好きだったのか」と意外な側面を発見しつつ、植物に対する熱い思いもたっぷり教えてもらいましょう。 5月号掲載・第2回では、川原田さんが大好きなフジについてお話を伺いました。「みんなの趣味の園芸」で募集したみなさんからのフジの写真も、川原田さんのコメントとともにご紹介しています。