円高でも日経平均が底堅い動き 日銀ETF買い入れ増額のほか2つの要因とは?
USD/JPYが100近傍で停滞しているわりには日経平均株価が底堅い動きをみせており、最近はそれが話題となっています。 2010年以降の日経平均とUSD/JPYの関係に基づくと、USD/JPYが100の時、日経平均は1万4000円程度まで下落することが整合的なのですが、足元の水準はそれを3000円程度も上回っています。日本株はなぜ円高に持ち堪えられるようになったのでしょうか。考えられうる3つの要因について、第一生命経済研究所のエコノミスト・藤代宏一さんが解説します。
要因1 日銀のETF買い入れ増大が日本株を下支え
まず1つめの要因として考えられるのが、日銀によるETFの買い入れです。日銀は7月29日の金融政策決定会合でETFの買い入れペースを従来の3.3兆円から6兆円に増額しました(同時に日銀は年間0.3兆円のペースで日本株を売却しているためネット購入額は5.7兆円)。
それが日本株を下支えしているとみられます。この6兆円という数値は、株式時価総額である500兆円の1%強に相当し、2016年入り後の外国人投資家の売り越し額である6.8兆円の大半を吸収する規模です。
日銀は(基本的に株価が下落している日に)1日あたり700億円強の買い入れを実施していますが、これは最近の東証一部の売買代金が2兆円弱であることから判断すれば相当な規模と言えるでしょう。単純計算すれば、一日の売買のうち4%弱が日銀ということになりますから「官製相場」とやゆする声が大きくなるのもうなずけます。
要因2 日本企業が円高に慣れてきた
2点目としては、日本企業が円高に対する耐性を増したことが評価されている可能性が指摘できます。2008年から12年にかけて円高を経験した日本企業は、為替変動が業績に与える影響を抑える目的もあって、国内生産・輸出で稼ぐビジネスモデルに区切りを付け、海外現地生産への切り替えを進めてきました。実際、製造業の海外現地生産比率はすう勢的な上昇基調にあります。 また、国際収支統計で資金フローを確認してみると、海外子会社の稼ぎに相当する直接投資収益が増加基調にあり、連結決算でみた日本企業(≒親会社)の利益に貢献していることが見て取れます。直接投資収益は2000年代半ばと比較して約3倍に膨れ上がっています。これは「産業の空洞化」という負の効果をもたらすと同時に、為替変動に強い日本経済を作り上げるという2つの構造変化を生じさせました。