円高でも日経平均が底堅い動き 日銀ETF買い入れ増額のほか2つの要因とは?
こうしたなか注目されるのは輸出の動向です。輸出を実質輸出という(数量に近い概念で付加価値を反映する)ベースでみた場合、最近の円高にもかかわらず、足元ではむしろ増加基調にあることが目を引きます。 かつて、日本経済は円高になると輸出競争力低下に苦しみましたが、それを教訓に日本企業は成長の源泉を価格競争力ではなく製品の差別化、すなわち高付加価値化に求めるようになりました。こうした過去数年のビジネスモデル変更を経て、最近は円高になっても受注が減少しないような製品が輸出の主力となりました。それが奏功して輸出が減少しにくくなっている可能性が指摘できます。この「減らない輸出」が株式市場で評価されているのでしょう。 なお、2013年~15年にかけての円安局面で輸出がさほど増えなかったことは、これと裏返しの関係といえます。(※ただし、円高が日本企業にとって打撃であることに変わりはありません。数量ベースの輸出が減らなくても金額ベースの輸出は減りますし、海外子会社の株式等、外貨建て資産の価格は円ベースで減少します。ここでの議論は過去との比較において円高に強くなっているとの指摘です)
要因3 日本株が高利回り資産になっている
そして3点目は、日本株が有数の高利回り資産になったことです。日本株の配当利回り(TOPIX、先行き12カ月予想)はこの1年程度2.5%±0.3%で安定していますが、ここで日本の長期金利が一時20年ゾーンまでマイナスとなったことや、米国債の10年金利が僅か1.5%程度まで低下していることを思い出してください。 ほかの先進国に目を向けるとユーロ圏の短期金利が▲0.4%となっているほかスイス、デンマーク、スウェーデンが軒並みマイナス金利、英国も7年ぶりの利下げを経てゼロ金利に近づいています。こうした世界的低金利の下で、投資家が2~3%の利息・配当収入を獲得したいと考えた場合、10年国債であればタイ(S&Pの格付けBBB+)、ハンガリー(BB+)、ポーランド(BBB+)、ポルトガル(BB+)といった比較的格付けが低い国々まで触手を伸ばす必要があります。欧州債務問題の際に7%を超えていたイタリア、スペインの10年金利が今や1%程度まで低下したことが象徴するよう、投資家は“利回り探し”に苦労しています。こうして考えると、やはり日本株の配当利回りは非常に魅力的であると考えられ、投資対象としてリスト上の位にきているのでしょう。減配リスクの低い銘柄を中心に“イールド・ハンティング”の買いが入っている可能性が指摘できます。 以上3点が最近の日本株の底堅さを説明していると考えられます。 (第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)
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