緑もエアコンもなく熱波直撃 米NYブロンクス地区
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【8月17日 AFP】米ニューヨーク市の中で相対的に貧しい地区であるブロンクス(Bronx)が、熱波の直撃を受けている。 退役軍人レイナルド・モラレスさん(68)は、自宅でエアコンを使うと電気代がかさむため、冷房の効いた高齢者コミュニティーセンターに通っている。 「私たちはコンクリートジャングルに住んでいる」とモラレスさん。「こういったクーリングセンター(暑熱避難施設)があるのはいいことだ。ただ、自宅で冷房を使う余裕がないなんて、ひどい話だ」 45度超えのラスベガスには及ばずとも、ニューヨークでも35度を超えることはある。 7月上旬には、ブロンクスとマンハッタン(Manhattan)を結ぶ回転式の橋が、暑さで油圧装置の金属が膨張したため、回転の途中で数時間にわたり止まってしまった。ボートで装置に放水し、冷却したところ、問題は解決した。 ブロンクスは貧困、医療問題、大気汚染といった課題を抱えている。その上、木陰が少ないためより過酷な高温に見舞われる区域もある。 モラレスさんが涼みに訪れる高齢者センターの職員は、「日をさえぎるものがほとんどないので、太陽が真上にある時は非常に暑くなる」と話した。 ブロンクスの住民の多くは低所得の中南米系やアフリカ系アメリカ人だ。彼らは、林立する建物が熱を吸収し、高温かつ湿度も高めのニューヨークの夏をさらに過酷なものにしていると訴える。 ブロンクスのハーレム(Harlem)川沿いには、発電所や倉庫、ごみ処理施設が立ち並び、熱を排出している。 市民団体「サウス・ブロンクス・ユナイト(South Bronx Unite)」の代表アリフ・ウラーさんは、人種差別的な都市政策が施行されているために、ブロンクス南部のような場所ではヒートアイランド現象が起き、健康問題の要因となっていると指摘した。 「実際、これは生死に関わる問題だ」 ニューヨーク市が4月に公表した報告書によると、ブロンクス南部のハンツポイント(Hunts Point)やモットヘイブン(Mott Haven)といった区域では、大気汚染が原因の呼吸器系疾患で救急外来にかかる割合が平均を上回っている。報告書公表を受け、同市は初めて、「環境正義」と呼ばれる課題に取り組むこととなった。 市によると、ニューヨークでは毎年約350人が暑さや、暑さによる持病の悪化が原因で亡くなっている。このうち、黒人の割合は白人の2倍だ。 市は、深刻化の一因として、ニューヨークの他の地区と比べ、ブロンクスではエアコンがない家庭が多い点を挙げている。 映像は7月に撮影。(c)AFPBB News