パリは最もサステナブルな五輪を開催できるのか? 地球規模のスポーツイベントを再考する
オリンピック・パラリンピックは街の持続可能性を高めたのか?
気候変動により、パリの夏が年々暑くなっている中で、パリ大会では選手や観客をいかに暑さから守るかという懸念が高まっている。当初カーボンフットプリントを削減するため、選手村では地中から汲み上げた冷水を利用する地熱冷却システムを備え、エアコンを新設しない予定であった。しかし選手の健康を考え、最終的には臨時のエアコン2,500台が設置される予定だと報道された(※8)。サステナビリティと人々の安全の両方のバランスをとることが難しくなっているのが現状だ。 一方でパリ市は、こうした夏の暑さによるヒートアイランド現象を和らげるために近年で何千本もの木を植えてきたとしている。パリとその周辺地域の都市計画や開発に関する調査をする組織APURによると、現在パリの面積の約31%が緑地となっており、ここ数年で目に見えて緑化が加速したという(※9)。
「オリンピックは、都市の緑化を加速させる絶好の機会だと私たちは考えていました」と、2014年から先週までパリの都市計画担当社会党副市長を務めたエマニュエル・グレゴワール氏はThe Guardianに対して語っている。
たしかに、セーヌ川の汚染改善やパリの緑化だけでなく、自転車道路の整備なども含め、サステナブルな取り組みは今回のパリ大会をきっかけに大きく前進しており、この機会がなければさらに年数を費やしていただろう。
2024パリ大会が、大規模スポーツイベントについて再考するきっかけに
「史上最も環境に優しいオリンピック」を宣言し、ここまで準備を進めてきたパリ市だが、それでも避けられない環境負荷や社会階層間の分断の拡大も見えてきた。歴史を振り返っても、1万人の選手および推定1,500万人の観客が集まるとされる大規模なスポーツの祭典は、典型的なグローバリゼーションの課題を抱えざるを得ないこともたしかだ。 気候コンサルタント会社Carbone4のシニアマネージャーであるセザール・デュガスト氏は、The Guardianの記事に対して以下のように述べている。