世界の恐ろしい「魔女」5選、皮を脱いで寝息を吸う魔女からインドの残忍な吸血女まで
チェディペ インドの吸血魔女
チェディペはインドのゴーダーバリ川周辺の地域に住む魔女。伝説によるとチェディペは家に忍び込むと、まず家人の意識を失わせてから、彼らを痛めつけるのに最も残忍な方法を考えるという。 方法としては、足の指から血を抜く、舌を引き抜く、怪火がともった木の枝を皮膚の下に差し込むなどがある。また、チェディペはその家の妻帯者と性交渉を持ち、妻たちの心に不信の種をまき、その結果生じるいわれなき悲しみを食べるという。 ゴシック小説の研究者デヴェンドラ・ヴァーマは、チェディペの伝説はシルクロードを通ってヨーロッパに伝わったのではないかと考えている。その結果、ジョン・ポリドリ著『吸血鬼』やブラム・ストーカー著『吸血鬼ドラキュラ』のように、吸血鬼が性的な要素を持つ怪物として描かれるようになったのだろうと言う。
ラ・レチューサ フクロウの魔女
ラ・レチューサ(スペイン語で「フクロウ」という意味)は、メキシコ北部に伝わる巨大なフクロウの姿をした魔女。人間の顔を持っていることもある。 ラ・レチューサの始まりは、ある女性が悪魔と契約を結んだからとか、魔力を使って巨大な鳥に乗り移り、天候を操る力を持つようになったなど、いろいろなバリエーションがある。 どのように誕生したにせよ、ラ・レチューサは夜、酔っぱらった男を獲物にすることで知られている。ラ・レチューサは男を巣まで持ち帰って食べるか、呪いの羽で触れてその場で殺す。 しかし近年、女性や性的マイノリティーの人々が、ラ・レチューサを力のシンボルとして見直し始めている。 「伝統的な女性・男性の定義の枠に収まらない人たちは、魔女というレッテルを肯定的に捉えていることが多いです」と、ジェンダーや民話を研究する作家のジーナ・ジョーゲンセン氏は言う。特に不当な扱いを受けたり、旧来的な保護が受けられなかったりする場合がそうだ。
バーバ・ヤーガ 生と死を司る魔女
バーバ・ヤーガ(バーバ・ヤガー)はスラブ民話に登場する生と死を司る恐るべき魔女だ。冬と収穫の終わりを象徴し、避けようのない腐敗と変化を体現するものとして語られたり、あるいは、生と死の境を見張るものとして語られることもある。 とはいえ、恐れられているばかりの存在ではない。正しく接すれば知恵を授けてくれたり、魔法の力で助けてくれたりすることもある。 バーバ・ヤーガは鉄の歯を持ち、目が悪く、脚の一本は骨がむき出しの姿で描かれることが多い。彼女が暮らしているのは、ニワトリの脚が付いた、棺を思わせるような小屋で、全体が人間の骨で飾られている。 ニワトリの脚が付いた小屋は、バーバ・ヤーガが古代から荒々しい自然と結びついていることを示しているとする解釈もあると、バーバ・ヤーガから着想を得た小説『Thistlefoot』の著者で、民俗学者でもあるジェンナローズ・ネザーコット氏は言う。 「バーバ・ヤーガは自然への回帰でもあり、ファンタジーという安全な形で、この世界の向こうにある荘厳な世界を私たちに探検させる偉大な力の象徴なのです」
文=Cezary Strusiewicz/訳=三好由美子