特許庁が認めなかった「シン・ゴジラ」の立体商標、一転東宝の主張認める判決…知財高裁はどう判断したか?
●立体商標で保護されると半永久的
――なかなか複雑な判決でしたね。その影響を教えてください。 今回の判決では、「…だから…なのだ」というようなはっきりとしたロジックはないように思えます。 また、被告特許庁の主張に対しても、知財高裁は「……原告の主張立証の逐一を論難するが、ゴジラ・キャラクターの圧倒的な認知度の前では些末な問題にすぎず、上記(2)の判断を左右するものとはいえない」と排斥しています。しかし、これでは、みなまで言わせるな、そこは忖度せえ、と言っているに過ぎないように思えます。 結局、特許庁の懸念は、圧倒的な伝統的ゴジラの認知度の進撃の前にまさに破壊されたというのが私の印象です。 個人的にはシン・ゴジラ第4形態の立体商標の登録でバンザイ!という風には思えない所もあります。 親出願での指定商品だったら、別に構わないと思うのですが、今回の第28類の「縫いぐるみ、アクションフィギュア、人形 、その他のおもちゃ」の指定商品への立体商標だと、そのものに過ぎない感が出てきます。 それがなぜ懸念されるかというと、商標で保護されてしまうと半永久的に保護されるからです。 著作物だと著作権法で、映画の著作物の場合、「公表後70年」で著作権がなくなる旨規定されています(著作権法54条1項)。ゴジラは今年でちょうど70周年ですので、今回の知財高裁の結論は偶然ではないような気もします。 特許法で保護される発明もそうですが、すべての創作物は先人の歩みの上に成り立っております。ですので、その先人の歩みの上に立つことが許されないとなると、創作や開発を邪魔し阻害してしまうことになります。特許庁の懸念も実はそういう所にあったのではないでしょうか。私も同様に思います。 【プロフィール】 岩永 利彦(いわなが としひこ)弁護士 ネット等のIT系・ソフトウエアやモノ作り系の技術法務、知的財産権の問題に詳しい。メーカーでのエンジニア、法務・知財部での弁理士を経て、弁護士登録した理系弁護士。著書「知財実務のセオリー 改訂版」及び「エンジニア・知財担当者のための 特許の取り方・守り方・活かし方 (Business Law Handbook)」好評発売中。 事務所名 :岩永総合法律事務所 事務所URL:https://www.iwanagalaw.jp/