【真理子の部屋/晩秋S】誰よりも競馬での強さを知っている
【真理子の部屋/土曜東京10R・晩秋S】 競馬に携わる方々を独自の感性で描き続けてきた赤城真理子記者。それらは「予想」というカテゴリーにとどまらない、ある種の〝物語〟といっていいのかもしれない。最前線で活躍する赤城記者がお届けする人馬のストーリーをぜひご堪能ください。
◆誰よりも競馬での強さを知っている
「負けてしまったけど、この馬の強さを改めて…というか、今までで一番というくらいに、強く感じたレースでした」 マテンロウガイの前走、秋の東京・神無月S。結果は4着でしたが、彼のことをよく知る方なら、どれだけ厳しい展開であったか分かると思います。その最たる方が角田大和騎手。翌週のトレセンで、冒頭のようにおっしゃっていたのが印象的でした。 しぶとさが強みのマテンロウガイにとって、馬群がダンゴになり、上がり勝負になった前走は、いわば最悪の展開になったと言っていいと思います。それも出走馬15頭の中での12番枠。内側に何頭か速い馬がいたので、鞍上はポジション取りにも一瞬の判断が必要でした。主張する馬たちを行かせ、先行集団直後の外めを追走。いつものように早めに動いていきましたが、1100メートルあたりからうまくペースが落とされていたため、4コーナーを過ぎ直線半ばからは後続馬が一気に動いてきたのです。 ハナを切りペースをつくっていた勝ち馬のダノンブレットも、もともと切れる脚を持った追い込み馬。横山典騎手のエスコートにより脚がたまっていたため、この馬こそ後続を突き放していきましたが、マテンロウガイはその時すでに一杯の走りに見えました。 「のみ込まれる!って思ったんです。実際、一回はのみ込まれかけました。でも、苦しくなったところからマテンロウガイはまたグッとハミを取ってくれた。最後はもう、頑張れ! 頑張れ!!って僕も必死でした」 最後は3着のネッケツシャチョウと馬体を併せるようにして手応え以上に踏ん張っていたマテンロウガイ。当日にレースを見た時から人馬ともにすごい根性だなあと感動を覚えていましたが、角田騎手のお話をお聞きしてから改めて映像を見返すと、直線で無我夢中に追うアクションに馬への懸命な鼓舞が乗っている気がしました。確かに、ジョッキーの頑張れ、の声が聞こえると感じました。