9試合未勝利のワースト記録更新ヴィッセル神戸は就任濃厚のロティーナ新監督で変わることができるのか
永井と森重の言葉からわかるのは神戸の選手、特に守備陣がボールウオッチャーになりすぎるあまり、自軍のゴール前で最もケアすべきポイントを疎かにしていた点だ。 開始11分に幸先よく先制した前半を、リュイス監督は「こちらが完全に試合を支配できた」と振り返った。しかし、支配はしても肝心の追加点を奪えない。追いつかれた直後に勝ち越し点を奪われる展開は、後半4分に先制しながら同10、13分に連続失点を喫し、最終的に1-3で敗れた京都サンガF.C.との前節とまったく同じだった。 リーグ戦で複数得点をマークしたのは、2-2で引き分けた2月23日の浦和戦だけ。ノーゴールに終わった試合が「5」を数えるなど、わずか「5」にとどまっている総得点もリーグで3番目に少ない。先制点を奪った3試合でも追加点を奪えず、逆転負けか、もしくは引き分けに終わっている結果を汰木はこう振り返った。 「苦しい試合が続いていると、どうしてもナーバスな気持ちが生まれてきてしまう。そういったことがないように選手同士でコミュニケーションを取っているけど、こぼれ球が相手に転がるとか、運も含めて自分たちになかなか流れがこない時間帯も多くて。細かいところで負けが続いているので、チームとしてもう一度突き詰めていきたい」 2020年9月から指揮を執り、昨シーズンにはクラブ史上最高の3位へ神戸を躍進させた三浦前監督を、リーグ戦で4分け3敗となった翌日の3月20日に解任した。荒療治を施したはずが状態はいっこうに上向かず、さらに2つの黒星を積み重ねた。 バトンを引き継いだリュイス監督は、トップチームの若手指導に特化したヤングプレイヤーデベロップメントコーチからの内部昇格であり、神戸側も「暫定的に指揮を執る」と明言していた。そして、新指揮官として64歳の知将ロティーナ氏の就任が内定したと、FC東京戦を前にしてスポーツ紙などが一斉に報じた。 母国スペインを中心に指導者として30年近いキャリアを持つロティーナ氏は、ヴェルディを率いた2017、18シーズンと続けてJ1昇格プレーオフへ進出させた。J1のセレッソを率いた2019シーズンは5位、2020シーズンは4位にそれぞれ導いている。 組織的で強固な守備を形成した上で、攻撃を上乗せしていくスタイルは、長く低迷していたヴェルディをJ1へ近づけ、セレッソの1年目でリーグ最少失点、2年目でも3番目に少ない失点を記録した軌跡からも伝わってくる。攻撃陣にタレントを擁しながら守備が崩壊している神戸を再建させるには、打ってつけの指揮官と言っていい。 しかし、清水を率いた昨シーズンは一転して、残留争いに巻き込まれていた11月に解任されている。開幕前のキャンプから指導しながら戦術を十分に浸透させられなかったのが理由だが、シーズン途中に就任する神戸ではなおさら時間が足りない。