新・領域戦―サイバー戦どう備える(1)国益の摩擦反映 ネットに生じた境界
インターネットへの依存度の高まりとともに、善意に依存する仕組みでは、インターネットの安全な使用が保証できなくなってきました。さらには、インターネットに依存する金融システム、発電所、交通システム、航空管制等の安全までもが保証できなくなる恐れが出てきました。いわゆる「悪意ある活動」が主たる原因です。 以上のようなことから、各々の国家は政府の活動、重要インフラの活動、国民の生活等を悪意ある活動から守るために様々な方法を採るようになってきました。この国家の施策は、グローバルな仕組みであるインターネットにおいては国家間の協力と調整を必要としますが、それぞれの国は当然のことながら、自国の国益にとって有利な方法を追求することとなります。そしてそれが、インターネット・フリーダムの水平構造上に、国家毎の規制という摩擦を生じさせています。 さらに、地政学的な国家間関係のような国家間の安全保障上の摩擦が、このインターネットに関わる国益の摩擦に反映されるので、インターネットは一般の安全保障の関係と同じような国家間の境界を持つようになったと言えます。 また、その境界を設ける相手は、地理的に隣接する国家間の境界のみならず、グローバルに広がる水平構造に参加する国家主体及び安全保障上影響のある非国家主体が含まれます。 ただし、このインターネット・フリーダムの水平構造を利用してグローバルに展開したサービスを提供するマイクロソフト、アマゾン、グーグル等のような企業があり、境界間の摩擦を超える新しい国際的なパワーとしての意義を持つようになってきました。
従来は、サイバーセキュリティの確保要件をサイバー空間における「情報保証IA(インフォメーション・アシュアランス)」として捉えていました。「情報保証」は、安全なシステム使用とデータ管理を維持することです。これに加え現在では、フィジカルなシステムの運用の継続・維持の重要性を認識した「任務保証MA(ミッション・アシュアランス)、または、一般に事業継続BC(ビジネス・コンティニューイティ)」が、軍事作戦の指揮官及び企業の経営者のリーダーシップの問題として強調されています。 すなわち、「任務保証(事業継続)」は、物理的攻撃、サイバー攻撃・電子戦攻撃の状況下にあっても、作戦任務の遂行(コア事業の継続)を可能にすることです。作戦(事業)を継続するために確保すべきシステム・通信の優先順位は、作戦運用者・指揮官・経営者が判断すべき事項であり、その責任からは逃れられません。