EARTHGANGが語るアルゴリズムとの闘い、東京の記憶、ファレルやスヌープとのコラボ
アルゴリズムとの闘い、東京でのMV撮影
―“Earthgang vs. the Algorithm”というアイデアは、そもそもどのように思いついたのですか? またそのアイデアを複数のプロジェクトに分けて展開する事にした理由について教えてください。 WowGr8:このプロジェクトを分解してリリースした理由は、ファンに普通とは違った形で届けたかった、そして自分たちの音楽を消化する時間を与えたかったからだ。いきなり大きなプロジェクトをドロップして「じゃあ、さようなら」って感じにしたくなかったんだよ。今のストリーミング・サービスってシングルにより重きを置いているから、もし大きなプロジェクトとしてアルバムをリリースしたとしても、全ての曲を聴いてもらえなかったり、アースギャングをそんなに熱心に追いかけてない人にはちゃんと評価される機会すら得ることなく終わってしまう可能性があると思ったんだ。 プロジェクトを分解して少しずつリリースし、その後で全体像を見せるという方法を取ったのは自分たちにとってリスクだった。みんなが「おい、今回のアルバムは手抜きだったな、自分たちに何も与えてくれなかったじゃん」って言われるんじゃないかと怖かったんだ。でも今はみんな「なるほど、やっと分かったよ。前は「Blacklight」をちゃんと聴いてなかったけど、今は全体を通して一つのプロジェクトとして聴いている」って感じさ。そうやって、人々に違った形で音楽を吸収するチャンスを与えられているんだ。 ―それぞれのEPの主となるテーマは何ですか? Olu:最初のEP『RIP Human Art』はみんなが当時感じていた空気感を表している。人々は「どうなるんだろう? ロボットが来る。人間はロボットに置き換えられてしまう。プロデューサーも立場を奪われてしまう」と思っていた。前に黒人のAIアーティストが、黒人の子供の声とスタイルを使った作品を作っていたんだけど、あるレーベルが「これは自分たちは使えない、文化の略奪(Culture vultures)になってしまうから」と言ったんだ。そこから、アーティストは置き換えられるのか?という問いが浮かび上がってきたんだよ。 そして2作目の『ROBOPHOBIA』では、「AIやロボットは現実に存在している。じゃあ、どうやってそれらと共存し、クリエイティビティを駆使してテクノロジーと戦うのではなく上手く活用して自分たちに有利に使っていけるか?」というテーマが込められているんだ。 そして最後の『PERFECT FANTASY』では、コンピューターやテクノロジーとの共生が描かれている。理想とする世界では、テクノロジーは人間の体験をより良くするためのものであり、決して人間の体験を置き換えるものとして使ってはいけないんだ。ロボットを人間の生活をより良くするためではなく、人間がやるべき事をロボットにやらせるために作った時に問題は起こってしまう。 つまり、特にこの『PERFECT FANTASY』で音楽を通してやりたかったことはクリエイティビティがどうあるべきかという厳格なルールに縛られず、また創造性の本質を無理に合わせることなく、自由に表現できる世界を作りたかったんだ。そしてとても良い反応を得られたと思う。サウンド的にも特別なものになったし、プロジェクト全体をまとめて、それを新しい形で届けるというアイデアがリスナーに評価されていると感じているよ。そしてこれが俺たちの「ロボットのようにただルールに従って並ぶのではなく、一度は常識に逆らってみようぜ」って考え方なんだ。 ―「U Gotta」のミュージックビデオの撮影はいかがでしたか? 東京のダウンタウン(街中)で楽しんでいるように見えましたが、どんなバイブスでしたか? WowGr8:とても楽しかったよ。 Olu:うん、まさにそれに尽きるね。外で撮影していたシーンで、ブラック系の女の子たちが登場するシーンがあるんだけど、その子たちはたまたまゲームセンターで会ったアトランタから来ている俺たちのファンだったんだ。俺がエレベーターから降りた時に、彼女たちが「アースギャングじゃん! やばい、何してるの?」って言ってきて、「今ビデオ撮影してるんだよ」って言ったら、彼女たちもエレベーターから降りて友達を連れて撮影に参加してくれたんだ。まさに偶然の出来事で、アトランタのファンと日本で一緒にビデオを撮影するなんて最高だよね。 ―撮影中は周りにたくさん人が集まっていましたか? WowGr8:うん。 Olu:間違いなくね。 WowGr8:かなり目立っていたから、たくさんの人が見ていたよ。一度警察が来て何をしているのか聞かれたんだけど、おそらく、そのまま続けて良いって言われてさ。街中で撮影してるのをずっと見てる人が沢山いたよ。おそらく14、15時間は撮影していて、一日中いろんな場所で撮っていたんだ。タイムズスクエアみたいな場所が5、6箇所あったからそれをいくつも回って、ゴーカートもやって、最後にはパーティーもしたよ。長い1日だったね。