EARTHGANGが語るアルゴリズムとの闘い、東京の記憶、ファレルやスヌープとのコラボ
ファレル、T・ペイン、スヌープ・ドッグとのコラボ
―「U Gotta」はどのようにして作られたのですか? WowGr8:この曲は、パンデミックが徐々に収束し始めていたけどまだ世の中が不安を抱えていた頃に作ったんだ。2022年ぐらいだね。俺たちはマイアミを訪れた。その時に初めてファレルに会ったんだ。ぶっちゃけ、俺たちは彼に会いたかったんだよね。その時彼がレコーディングをしているって知らなかったんだけど、それを知って嬉しかったね。沢山制作をして、沢山のアイデアを彼と出し合った。本当に素晴らしいセッションだったよ。ファレルが作っていた、テキーラ・パープルレモネードってカクテルがあってそれが本当に美味しかった。俺たちはそれを飲みながら水辺を眺めていた。みんなでくつろいで、色々話をしたりしてさ。そしてビタミンB12も摂りながら、ヘルシーにちょっと酔っ払っていた。そんな感じであの曲を作ったんだ。 ―ファレルは多くの面で刺激的でモチベーションを与えてくれる存在だと思いますが、彼からのアドバイスで何か心に残っているものはありますか? WowGr8:経験そのものが心に残っている感じで、具体的な言葉は分からないな。みんな「彼はなんて言っていたの?」って聞いてくるんだけど、正直分からない。夢が叶った感覚で、お菓子屋さんにいる子供みたいな感じだよ。 Olu:彼らが空間を作り上げたんだよ。彼とチャド(・ヒューゴ)がね。チャドはほとんど話さなかったけど、いつもそこにいて、アイデアやバイブスを提供してくれた。 WowGr8:チャドがアイデアに対して「イエス」か「ノー」以上の言葉を発することはなかったけど、彼は音楽に完璧に集中していたんだ。 ―「Love You More」はどのようにして作られたのですか? WowGr8:T・ペインさ。ペインは俺たちがこれまで一緒に仕事をさせてもらった人たちの中でも最もプロフェッショナルな人物の一人だ。彼は俺たちのフィーチャリングの依頼を毎回受けてくれて、制作時間も適切だ。この曲に関して言えば、一緒に曲を制作をした後、彼がこの曲を俺たちに譲ってくれたんだ。彼は「この曲の居場所が見つからない」と言ったから「ちょうどアルバムを出す予定だから、そこに入れるよ」って言ったんだ。それだけじゃなくて、最後ギリギリのタイミングで曲を少し変える必要があったんだけど、彼はすぐに対応してくれたんだ。この曲を作り始めたこと、俺たちに譲ってくれたこと、そしてプロフェッショナルな姿勢に本当に感謝している。 ―「Flavors of Karma」を作った時はどんな気持ちでしたか? WowGr8:「リック・アンド・モーティ」を見ていたんだ。あの番組には沢山のエピソードがあって、色んな“別の可能性”を描いているよね。それで、別の可能性というものについて考え始めて「こんな人生だったらどうだろう?」って感じで言葉が一行ずつ浮かんできた。それと同時に「フレンチ・ディスパッチ」をよく見ていたんだ、2021年のことだね。俺はあの映画を何度も見ていて、その世界観がビートと混ざり合った感じだね。Amarahに感謝。俺はこの曲が大好きなんだ。この曲は俺をある“場所”から抜け出させてくれたんだ……うまく言えないけど。俺はそんなに考えすぎるタイプじゃないんだけど、一度考え始めるととことん深いところまでいってしまうんだ。その深い穴から抜け出すために、あえて考える必要があったのかもしれない。 ―「Flavors of Karma」の曲中に”俺はとても賢い。でもバカで幸せだったほうが良かったかもしれない。”という歌詞がありますが、どれくらいの頻度でそのように感じ、そしてその気持ちとどう向き合っていますか? WowGr8:たぶん、小学校2年生の頃から2週間に一回くらいかな、まじで。ずっとだよ。「無知は幸せ」って言うけれど、それは嘘じゃない、紛れもない真実だよ。時々、知識や情報って重荷になるんだよね。そして俺たちやこの社会は、これまでの人類の歴史で一番多くの知識と情報を持っている。全部あるんだ。 Olu:ありすぎる。 WowGr8:その中には自分から選んで得た情報、求めた情報、全く知りたくない情報もあるけど、それでも全部手に入ってしまうんだ。時には自分より無知な人を羨ましく思うこともあると思う。それは悪い事じゃないし、その人がどれだけ無知かなんて分からない。でも、誰かが自分より無知で幸せそうに見えたら、そういう風に思ってしまうのは人間として自然な感情だと思う。そして、俺たちが生きている今この時代だからこそ、その感情をより多くの人々の間で見かけるようになったと思うよ。 ―スヌープとの「PERFECT FANTASY」はどのようにして作られたのですか? WowGr8:たぶんアルバムの中で一番古い曲だと思う。俺がDishと一緒に作っていたデモだったんだ。Dishは「Blacklight」もプロデュースしているんだけど、俺たちは2019年と2020年にすごく仲良くなったんだ。だからパンデミック中はずっと一緒に音楽を作っていたよ。この曲の原型となるアイデアを作って、そこからいくつものバージョンを作った。ホーンが入っているバージョンもね。ホーンはSplice(*音楽制作のためのオンラインプラットフォーム)から、ベースラインはどこか他のところから取ってきたものだったかな、でもとりあえず俺たちは“時代を感じさせる曲”を作ろうとしていた。時代をテーマにした曲を作るのにすごくハマってたんだ。Dishと俺で集まって、80年代風の曲を作ろうとか、60年代風の曲を作ろうとか、色んな時代の曲を試していたね。それを1ヶ月続けて、後から聴き返した時にその中で良かった曲がこの曲だったんだ。それで、この曲をスヌープに送ることになったんだけど、彼がめちゃくちゃ良いラップをしてくれてさ。スヌープから戻しがあった時に、『Ghetto Gods』のアルバムに入れる予定だったくらいだいぶ前に作った曲だよ。そしてKP(*音楽プロデューサーのKawan Prather)が「いやぁ、スヌープが最高の仕事をしてるな。彼は完全にやり切ったね」って言ってたのを覚えてる。それで俺も「そうだね、この曲は残しておこう」ってなった。スヌープが本気を出してくれているのがとても嬉しかったよ。素晴らしい体験だったね。スヌープには何年か前に会ったんだけど、彼はいつだってクールで、俺たちのアイドルだよ。俺たちは彼の音楽を聴いて育った。本当に最高の体験だったな。