EARTHGANGが語るアルゴリズムとの闘い、東京の記憶、ファレルやスヌープとのコラボ
『PERFECT FANTASY』の制作過程
―このアルバム、そしてこの一連のプロジェクトは、主にどこでレコーディングされましたか? WowGr8:このプロジェクト? そうだな、ほとんどはアトランタでレコーディングしたかな。大部分はパンデミック中に録ったんだ。「Red Flag」や、それに似た曲達はまさにパンデミック中の深い思考の中で出来た曲だよ。みんなが腰を下ろして、じっくりと考える時間ができた時期にね。 ―隔離期間中にあなたが経験した最も大きな気づき(ブレイクスルー)は何ですか? WowGr8:そうだな、俺は人間関係についてすごく深く考えたよ。ロマンチックな関係、友情、一般的な尊敬の気持ち、人に対するリスペクト、人間としての礼儀とかね。それについて沢山考えた。そして俺たちが日本で経験したとても大事なことでもある。日本では人々がお互いに対してとても礼儀正しく接することが一般的なんだ。アメリカ、特にパンデミック中のアメリカにいると、今までずっと一緒にいた人たちとの関係について、なぜ自分がその人達と関わっているのか、すごく考える時間ができた。「なんでこの人と友達なんだろう? 自分たちは本当に友達なのか? この期間中に連絡をくれたことがあったか? お互いを大切に思っているか、そうじゃなければこの関係は一体何なんだ?」って。今の時代、友達になる理由って色々あるよね。SNSがあるし、みんな名声やビジネスの成功のために行動する、そんな感じだよね。だから、そういった事も全部考えないといけなかった。俺がデートしている女の子も「俺は何でこの子を連れているんだろう? 俺はこの子が好きなのか? それとも、ただみんなに“おお、綺麗な子と一緒にいるんだな”って言わせたいためだけなのか? 俺は彼女を人として大切にしているのか? 彼女は俺を人として大切にしているか?」って思ったんだ。そして、それが全部このプロジェクトにも反映されているんだ。さっきも言ったけど、「Red Flag」って曲はまさにそういう事を取り上げた曲なんだ。 Olu:人間関係というのは間違いないね。そしてさっき言っていたように、それが自分の意図かっていうことが重要なんだ。どうして俺たちは繋がりたいと思うのか? 孤独から繋がろうとしているのか? パンデミック中はたくさんの人が孤独感から人と繋がろうとしていたと思う。それが自然な事だったんだろうね。「うわ、俺は今一人でこの家にいる。君はこのパンデミックが起こる前に一番身近な人だったから、一緒に住んでこの状況を乗り越えようよ」って感じでね。で、この3~4年の間に、みんながようやく人との繋がりや本当に意味のある健全な人間関係を築く意図について気づき始めたと思う。その関係は別にクレイジーなものやモニュメンタルなものじゃなくて良いんだ。1日の終わりに、この関係はあなたの人生をより良くしているか? この関係はあなたをより良い人間にしてくれているか? それともこの関係はあなたの人生に価値を加えてくれているのか?って感じれるかって事だよね。 ―パンデミックを抜けて外の世界に戻ってきてから、そこまでに感じた事を基に、自分がどんな人間関係を築くべきかを見極められるようになりましたか? Olu:もちろんさ。この1、2カ月で沢山の人と話をしたんだけど、今年はここ2~3年の間に築いてきた人間関係に拡大鏡を当てたかのような感覚なんだ。「俺たちは何をしているのか」ってな感じにね。特に自分たちの行動範囲や職業柄、沢山の人と出会い、様々な人々と交流する機会がある中で、自分を大切にしてくれる、そして自分が大切にしたいと思える人たちを周りに持つということが重要だと思う。見えるものだけに寄ってくる人が多いと気づくのは簡単だよ。 ―プロデューサーやインストゥルメンタリストとは、どれくらいコラボレーションしているんですか? WowGr8:かなり積極的にやってるよ。Oluはハンズオンでのプロデュースも沢山手掛けている。でも、ビートを送られてきてそれにただラップを乗せるだけってわけにはいかない。自分の声が輝くスペースを作らなきゃいけないし、自分自身にスポットライトを当てなきゃいけないんだ。音楽をアレンジするのは楽しいよ。俺たちは音楽オタクだから、ステムとかいじったりして、曲をもっと没入感のある体験にするのが好きなんだ。 ―レコーディングする場所の雰囲気や環境が、曲へのアプローチにどのような影響を与えると思いますか? WowGr8:影響しないとは言えないね。色んな場所でレコーディングしてきたけど、以前ロンドンで作った曲のように、他の場所では作り得ないような曲を作った事がある。でも自分にとって最も大きな部分を占めるのは、場所よりもそこに一緒にいる人たちかな。ビートが流れ出す前にどんな会話をしていた?曲を作っていたのか? サンプルを探していたのか?みんなで何を話していたのか?何が面白かったか?何が面白くなかったか? その日はどんなムードだったか? 例えば俺たちのプロデューサーNatraの場合、俺は悲しい日も楽しい日も一緒に作業してきた。彼は「Electric」も「Red Flag」も手掛けていて、どちらも全く違うサウンドだけどその2曲を同じ日に作ったんだ。「Electric」はアシッドでキマッている時に作ったんだけど、ビデオゲームで遊びながら、クレイジーなアシッドビデオゲームソングが出来たんだ。そして「Red Flag」は俺の家でチルしている時に作ったんだ、雨が降っている日だったな。シラフで制作していた。Natraが雨の雰囲気に合うビートを流して、そこからこの曲を作っていった。つまり、環境と同じく一緒に制作している人たちとの会話も曲に影響を与えるってことさ。