【甲子園熱戦レポート│8日目】“常勝”大阪桐蔭の敗退をはじめ、波乱続きの今大会。低反発バット元年に「どんな野球をするか」の難しさ<SLUGGER>
「低反発バットに明徳の野球が適しているって、それはよう言われるけどな、バットが変わったからって野球を変えるようなことがあったらあかんよ。うちはなんも変えていない」 そう語ったのは初戦の2回戦を7対0で快勝した明徳義塾の指揮官・馬淵史郎監督である。 馬淵監督の指摘は納得する部分はあるが、それはあくまで明徳義塾のようなスタイルを持っているチームだ。「明徳義塾のような」とは長打に頼らない野球だ。短打を集中しながら、バント、盗塁、エンドランを駆使していく得点を挙げ、緻密に守って試合を制していく。 スモールベースボールと言ってしまうとやや語弊があるかもしれないが、負けない野球を基本としているとわかりやすいかもしれない。そういったチームは強い。今大会でいえば、明徳義塾のほかに関東一や広陵などがこの野球に当たる。もともとこのスタイルで名を馳せたチームだ。 一方、過去のチームとはスタイルを変えているチームもある。京都国際や智弁学園だ。しかし、指揮官の狙いは非常に似通っていて、これが面白いのだ。 京都国際の小牧憲継監督はいう。 「今年のチームはあまり際立った選手がいなくて、それでつないでいく野球をしようと言っています。それが上手く行っているのかなと思います」 智弁学園も同じだ。岡本和真(巨人)、廣岡大志(オリックス)、前川右京(阪神)のような強打者がいないという自覚があり、智弁学園の小坂将商監督は「今年はこういう野球で戦っていく」と覚悟を決めている。 おそらく、これはどの野球が正しくて、どういう野球が正しくないかの話ではない。低反発バット導入元年の中で、それぞれがチームなりに考えた結果としていろんな作用が起きている。それこそ、大阪桐蔭がスモールベースボールを標榜した野球をしはじめたとしたら、それはそれで面白くもないというものであろう。当然、神村学園や東海大相模、青森山田のように、そのまま打棒を発揮しているチームもあるのだ。 「一生懸命やりましたけど、技術的に徹底させてやることできなかった。色々やってきたつもりですけど、結果的には0点だったんで、徹底できなかった指導者の力不足があったと思います。走者を出すこと、足を絡めたりしてその中で勝負強さを出していきたかったですけど、チャンスを作ることもできなかった」 西谷監督はそうは話している。相次ぐ波乱が続く驚きの大会となっているが、おそらく、これはまだ収まらないだろう。それほど野球の違いが勝敗に大きく影響している。 取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト) 【著者プロフィール】 うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
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