パワー半導体向け需要開拓…「酸化ガリウムウエハー」、東北大発の新会社が狙う
東北大学金属材料研究所の吉川彰教授らは、酸化ガリウムウエハーの量産化に向けた新会社「FOX」を始動した。融解液から単結晶をつり上げる引き上げ法で、不純物や欠陥の少ない酸化ガリウムのインゴットなどを低コストで生産する技術の実用化に取り組む。パワー半導体向け需要の開拓を狙う。2028年内には、6インチウエハーの量産化技術確立を目指す。 30秒でわかる「パワー半導体」 FOXは、東北大の吉川教授とC&A(仙台市青葉区)が共同で開発したイリジウムるつぼを使わない単結晶育成技術「OCCC」法を用いて、量産化に踏み出す。高価な貴金属を使わずに酸化ガリウムバルク単結晶製造が可能で、製造コストを既存の製造法より100分の1程度に低減できるという。 4月に設立した新会社の本社は仙台市内に置いた。社長には電子部品メーカー出身の小野寺晃氏が就いた。吉川教授は技術顧問を担う。8月に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のディープテック・スタートアップ支援事業の採択を受け、本格展開することになった。マクニカ・インベストメント・パートナーズ、岩谷ベンチャーキャピタル(大阪市中央区)、東北テックベンチャーズ(東京都港区)の3者から出資も受け、現在の資本金は2億7950万円(資本準備金を含む)。 エネルギー損失を抑えられるなど酸化ガリウムは、パワー半導体向け材料として期待されている。同日に東北大で会見した小野寺社長は「日本半導体産業の復活に向けた挑戦と創造をしていきたい」と意気込みを示した。