来年度政府予算案で歳出規模は過去最大を更新へ
少数与党のもと最終的な予算はさらに膨張か
例年であれば、政府が与党の税制改正大綱と予算案を閣議決定すれば、翌年度の税制改正、予算執行など経済政策の多くは年内に決まることになる。 しかし、今年はそうはならない。衆院で少数与党となった政権は、税制改正案、予算案で野党の要望を受け入れざるを得ず、その結果、予算は膨張し、財政赤字は拡大しやすい。来年、与党の税制改正案、政府の予算案がどのように修正されるのかは、現時点では読めない面がある。 例えば、立憲民主党と日本維新の会、国民民主党の野党3党が共同提出した「学校給食法改正案」と日本維新の会が求める高校の教育無償化を2025年度予算に組み入れれば、その分、一般歳出額は1兆円以上膨らむことになる(コラム「野党3党が給食無償化法案を共同提出」、2024年12月25日)。
政策の取捨選択を
与党が議席の過半数を占めていた際には実現されなかった政策が、野党の政策を反映させていくことで実現されるようになるというプラスの面があることは確かだ。しかし、野党が自らの党の公約を実現するために、政策協力と引き換えに様々な政策の実現を要求するようになると、予算は膨張の一途をたどる。 それに対して十分な財源確保がなされない場合には、国債発行でその穴埋めがされる。国債発行は、低所得者も含む幅広い国民の将来の税金で賄うことを前提とするものであり、将来の国民の手取りを減らすことにもなってしまう。将来まで見据えれば、野党各党が目指す低所得者層の負担軽減、手取りの増加に逆行してしまうのである。 野党側が新たな歳出増加を求める場合には、他の歳出を削減する、あるいは新たな増収策を図るなど、財源確保の案についてもしっかりと示し、メリハリの利いた形で政策の取捨選択を提案することが求められよう。 (参考資料) 「25年度予算案、過去最大115.5兆円 税収も最高78.4兆円」、2024年12月25日、日本経済新聞電子版 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/media/column/kiuchi)に掲載されたものです。
木内 登英