開通50周年のJR湖西線 関西と北陸を結ぶ重要路線 琵琶湖&比良山系の眺望と高速運転が魅力
“鉄っちゃんアナ”としても親しまれる鉄道通のフリーアナウンサー・羽川英樹さんのラジトピコラム「羽川英樹の出発進行!」。今回、羽川アナが現地取材したのは、京都と滋賀の近江塩津を結ぶJR湖西線です。それでは、出発進行! 【動画】鉄アナが実況レポート! JR湖西線を行く ◆羽川英樹の出発進行! この7月20日にJR湖西線は開通50周年を迎えました。1974(昭和49)年に山科~近江塩津間(74.1キロメートル)で開業した湖西線のルーツは、同じ琵琶湖西岸を走っていた江若(こうじゃく)鉄道にあります。1969(昭和44)年まで浜大津~近江今津間(51キロメートル)を走っていましたが、その名の通り、本来は近江と若狭を結ぶ計画があったようです。しかし、資金難や乗客数などの問題から断念。今はその夢を受け継ぎ、特急サンダーバードや湖西線経由の新快速が敦賀までを結んでいます。 湖西線の列車はすべて『京都』発で、琵琶湖線と分岐する『山科』を出て長等山トンネルを抜けると『大津京』に到着します。 駅前には大津市で最初に建設されたタワーマンションがそびえれば、琵琶湖岸にも大型マンションが次々に立ち並ぶ様子も。そういった状況もあり、湖西線の途中駅で最多の乗降客数を誇る『大津京』ですが、残念ながら大津京の遺跡らしきものは周りに全く見当たりません……。ちなみに、ここで京阪石山坂本線とも接続します。 湖西線の使用車両は昨春までは113系・117系などの姿も見かけましたが、今は223系・225系などが主力となっています。 『大津京』を出ると『唐崎』を経て、次は延暦寺の門前町として栄えた『比叡山坂本』。独特の穴太衆積みの石垣の参道、紅葉の名所でパワースポットでも有名な日吉大社、明智光秀一族の菩提寺・西教寺、創業300年を誇る「鶴喜そば」など、見どころは満載です。 1200年の歴史を誇る近江の名湯がそのまま駅名となった『おごと温泉』を過ぎると、次は湖西の中心地でかつては湖上交通の要衝として栄えた『堅田』(かたた)。近江八景の一つに数えられる浮御堂も有名ですよね。同駅がある堅田地区は琵琶湖が一番狭まったところにあり、琵琶湖大橋で対岸の守山市と結ばれています。 びわ湖ローズタウンのある『小野』、難しい漢字の『和邇』(わに)を過ぎ、『蓬莱』を出ると右側の車窓に琵琶湖がきれいに見え始めます。そして左には1000メートル級の比良山系が迫ってきます。湖西線は踏切がなく全線高架のため130キロの高速運転が可能で、車窓からの景色も抜群なんです。 『志賀』からはびわ湖テラス行のバスが出ています。かつてはカーレーターでガタゴトと登っていましたが、今は高速ゴンドラで頂上まで一直線。標高1108メートルからの眺めは最高で、夏は下界とは10℃ほども違う別天地です。 『比良』は比良登山の玄関口であり、びわこ成蹊スポーツ大学の最寄り駅。山側の北比良エリアには別荘・住宅地が広がり、おしゃれなカフェも増えてきました。また「比良とぴあ」は登山客にも人気の温泉です。 次は夏はレジャー客でにぎわう『近江舞子』。普通列車の多くはこの駅停まりとなります。ここは白砂青松の砂浜と松林がひろがる湖西随一のレジャースポット。子どもの頃、親と一緒に当時の江若鉄道でよく泳ぎに来たものです。ただ冬は比良おろしが吹きつけ、運転取り止めになることもままあります。 『近江舞子」から次の『北小松』あたりまでは、琵琶湖が最も眼前に迫ってくる美しい風景が広がりますので、車窓から目を離さないでください! 『北小松』を過ぎると大津市から高島市に入り、湖岸には湖中鳥居でおなじみの白髭神社が。道路の横断が危険なので、今は境内側にお立ち台が設置されています。 ガリバー像がそびえ、かつては大溝城もあった『近江高島』。儒学者・中江藤樹を生んだまち『安曇川』。高島市役所の最寄り駅『新旭』にも停車します。 そして、かつての江若鉄道の終点でもあり、湖西線の重要拠点が『近江今津』です。この駅で敦賀行の新快速は12両のうち後ろ8両が切り離されて、4両編成になりますのでご注意ください。今津には竹生島に向かう港や「琵琶湖就航のうた記念館」もあり、冬はスキー、夏は避暑でにぎわう箱館山も、この駅からアクセスします。 4両編成と身軽になって『近江中庄』を過ぎると、『マキノ』。カタカナだけの駅名はニセコやユニバーサルシティなど全国でも数か所しかありません。ここには2.4キロメートルにわたり500本が植えられたメタセコイヤ並木があり、四季折々に美しい景観を見せてくれます。また高木浜から知内浜まで1キロメートルに渡る美しい渚を持つ「マキノサニービーチ」にも夏は多くの水泳客が訪れ、春の海津大﨑の桜の人気スポットです。 『マキノ』を過ぎると長浜市に入り、のどかな風景が広がる中、湖西線で一番乗降客の少ない『永原』に停車。 長い城山トンネルを抜け、右から米原方面からの北陸本線が寄り添ってきたら、滋賀県最北端で湖西線の終点『近江塩津』。京都から新快速で約50分での到着です。この駅で北陸本線・琵琶湖線経由の新快速・姫路行と接続します。 一方、新快速・敦賀行はこのあと北陸本線に入って走っていきます。敦賀から姫路まで福井・滋賀・京都・大阪・兵庫と5府県をまたぐ新快速は全国でも貴重な存在ですよね。 京都や大阪のベッドタウンでもある湖西地区の足として、自然豊かなリゾート地へのアクセスとして、走り抜けて半世紀。今や湖西線は、新快速や普通列車、そして1日25往復の特急サンダーバードや貨物列車も走り、関西と北陸とを結ぶ短絡重要路線としてもしっかり機能しているんです。(羽川英樹)
ラジオ関西