ラノベはどうやって世界に広がった? 渋谷TSUTAYA「ライトノベル展2024」で知る軌跡と現在地
ヤマグチノボルの『ゼロの使い魔』や竹宮ゆゆこの『とらドラ!』といった作品は、ライトノベルとして読むよりアニメとして見た人がもしかしたら多いかもしれない。川原礫『ソードアート・オンライン』も、アニメを通して全世界に広まり、それが原作の翻訳を世界に展開する原動力になっている。世界で日本のアニメ人気が高まっていることもあり、作品の世界展開に向けたアニメ化は今後も積極的に行われるだろう。 KADOKAWAではこうしたライトノベル原作のアニメ作品を、早くから海外向けに展開して来たが、最近はクランチロールやNetflix、AmazonPrimeビデオといった映像配信サービスで、日本での放送と間を置かず配信され、いっしょになって盛り上がれる。海外からの観光客が渋谷に来て、いっしょに写真を撮るほどの知名度をライトノベルが得ている背景には、そうしたディストリビューションチャネルの変化がある。 橘公司の『デート・ア・ライブ』は、中国での人気が絶大で、5期にわたってアニメシリーズが作られたのもそうしたファンが見込めるからだと言われている。KADOKAWAという会社に世界の視線が集まっている理由には、日本のアニメに対する需要が高まっている中で、アニメ化に向いた多くのライトノベル作品を持っていることがあるのだ。 キャラクタービジネスでも、ライトノベルは漫画と並んで大きな力となっている。ハルヒや『Re:ゼロ』のレムなどはその一例。「ライトノベル展2024」では『Re:ゼロ』からレムではなくヒロインのエミリアがピックアップされ、ハルヒや『SAO』のキリト、橘公司『デート・ア・ライブ』の夜刀神十香、井上堅二『バカとテストと召喚獣』の姫路瑞希もキービジュアルに並んで存在感をアピールしている。6階ではグッズが販売され、7階ではコラボレーションカフェも展開されて、5人も含めた好きなキャラクターに近づける。 漫画やアニメのキャラクターなら、『鉄腕アトム』の時代からビジネスの種になっていたが、小説となるとアニメ化でもされない限りキャラクターグッズが盛り上がることはなかった。ライトノベルは小説でありながら、キャラクターでもビジネスが成り立つことを示した。漫画やアニメのような表紙とイラストが添えられたことも大きいが、強い個性を持ったキャラクターたちを描くことに、ライトノベルのクリエイターたちが取り組んできた現れとも言えるそうだ。 2020年代に入ると、ライトノベルも文庫レーベルに留まらず、ノベルズの方にも広がって、丸山くがね『オーバーロード』や理不尽な孫の手『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』、馬場翁『蜘蛛ですが、なにか?』、逢沢大介『陰の実力者になりたくて!』といった作品が刊行されるようになった。「小説家になろう」「カクヨム」といった小説投稿サイトから注目作を書籍化する流れとも相まって、こちらも刊行点数が増えるばかりだ。 もしも10年後にまたSHIBUYA TSUTAYAで「ライトノベル展2034」が開かれたら、今度はフロアを何層も使って表紙絵を飾らなくてはいけないくらい、数多くのライトノベルが世の中に登場していそうだ。
タニグチリウイチ