狙うべきは「意外な客層」、売上を2.5倍に伸ばしたディズニー・ジャパンの大胆な戦略転換とは
■ 成果を出す人を辞めさせないために「人事評価にメリハリを持たせる」 ──著書では、ウォルト・ディズニー・ジャパンのV字回復のために行った打ち手として「完全成果主義をメインにした人事評価制度」を挙げています。具体的には、どのような制度を導入したのでしょうか。 中澤 ウォルト・ディズニー・ジャパンで採り入れた人事制度は「業績によって昇進や降格、年収が決まる」というものです。そして、完全成果主義を正しく運用するために、5段階の相対評価を導入しました。 これは外資流の経営を経験した方であれば、なじみのある制度でしょう。しかし、それまでは日本的な経営がなされており、5段階評価(S、A、B、C、Dのいずれか)でありながら、全社員の50%以上にA評価がつけられていました。 そこで私は、5段階評価の基準を「目標を100%達成しただけであればB評価」「目標達成度が高ければA評価」とした上で、「目標未達成であればC評価、あるいはD評価として、いずれの場合もボーナスは0」と変更しました。そして、C・D評価がついたことで発生しなかったボーナスは「目標達成度が高く、会社にとってさらに意味ある価値を提供したS、A評価の人」に回す仕組みとしました。 これによって、目標を100%達成することは「当たり前」という風潮ができ、社員には危機感と同時に「能力を向上させよう」「成果を出そう」というモチベーションが生まれることになりました。 こうした一連の改革が奏功し、ウォルト・ディズニー・ジャパンは7年間で売上を2.5倍に伸ばすことができました。いずれの施策も外資流のやり方を採り入れたものでしたが、企業の生産性を高め、従業員のエンゲージメントを高めることにつながったと考えています。 ──近年、ジョブ型などの人事制度を採り入れる日本企業も増えていますが、どのようなポイントを押さえるべきでしょうか。 中澤 今の日本企業に必要なのは「いかに仕事ができる人に報いるか」という視点です。そのためにもメリハリのついた人事評価は欠かせません。 マクドナルドやディズニーでは、目標を達成してもB評価がつきます。S評価やA評価を得るためには、目標を上回る相応の成果を出さなければなりません。S評価やA評価の人は昇給・昇格し、C評価やD評価の人は新天地を求めて退職していきます。このように自然な新陳代謝を促すことが、真に健全な組織のあり方だと思います。 合理化・効率化を重んじるグローバルスタンダードを経営に採り入れることで、日本のビジネスパーソンの生産性向上、エンゲージメント向上に役立ててほしいと願っています。そうすれば日本はもっと暮らしやすく、幸福な社会をつくることができるはずです。
三上 佳大