狙うべきは「意外な客層」、売上を2.5倍に伸ばしたディズニー・ジャパンの大胆な戦略転換とは
日本企業が低成長から抜け出せない根本原因はどこにあるのか。苦境を乗り越えるためには何をすべきなのか。日本マクドナルドやディズニーストア、日本ケンタッキー・フライド・チキンといった外資系企業で経営に携わり、低迷期のウォルト・ディズニー・ジャパンでは業績のV字回復を導いた中澤一雄氏は「合理化と効率化を重んじるグローバルスタンダードを採り入れるべき」と語る。前編に続き、2024年9月に書籍『ディズニーとマクドナルドに学んだ最強のマネジメント』(宝島社)を出版した同氏に、経営戦略を転換させるためのヒントや、日本企業が経営改革を進める際のポイントについて聞いた。(後編/全2回) 【画像】中澤一雄 『ディズニーとマクドナルドに学んだ最強のマネジメント』(宝島社) ■ 相乗効果と好循環を生んだ新機軸「おとなディズニー」 ──前編では、日本企業が脱すべき悪しき慣習の存在や、マクドナルドから学ぶべき外資流の経営手法について聞きました。中澤さんはウォルト・ディズニー・ジャパンに在籍時、コンシューマープロダクツ部門日本代表として大胆な事業戦略の転換を進めました。キッズ中心の商品展開も大人向けに変えたとのことですが、既存客が離れるリスクはなかったのでしょうか。 中澤一雄氏(以下敬称略) 一連の改革については、商品展開の変更をリスクとは捉えず、相乗効果を狙うための機会だと考えました。 当時、ライセンス商品のメインターゲット顧客層はキッズとファミリーでしたが、実際には東京ディズニーランドの顧客の60~70%は大人でした。加えて、東京ディズニーシーでは大人の比率が90%を超えており、大人のお客さまは皆、キッズ向けの商品をやむなく買っていることに気付きました。 こうした状況を踏まえ、大人の顧客、その中でも「日本人の大人の女性」をメインターゲットとして打ち出したのが新コンセプト「おとなディズニー」です。ここでは化粧雑貨、ホーム雑貨、ファッション雑貨、ステーショナリー雑貨といった雑貨を中心に、大人にふさわしい洗練されたデザインの商品を多数展開しました。 大人がディズニー商品を買うようになれば、その子どもにとってもディズニーは身近な存在になり、大人に成長してから再びディズニーに戻ってきてくれる確率が高まります。一連の施策は、ディズニーが世代を超えて末永く愛される企業になるための戦略でもありました。 大人向けの洗練されたデザインが増えていくことに疑問を抱く人もいましたが、私がこのアプローチに確信を持てたのは、「日本独自の客層」のおかげでした。