【有馬記念】ドウデュース 走り始めると「矢のように伸びてくれる」友達みたいな存在
◇THANKS ドウデュース(3) 苦楽を共にした相棒と過ごす日々も残りわずか。前川助手はその時間をかみしめながら決戦当日を待つ。 ドウデュースとの出合いは21年秋。夏の小倉新馬戦(芝1800メートル)を勝った後、2戦目のアイビーSから担当を任された。懐かしそうに当時を振り返る。 「初めてまたがった瞬間に、ものが違うなと。その頃から能力が断トツだったし、G1を獲れる馬だと思いました」 98年に栗東・西浦勝一厩舎でトレセンのキャリアがスタート。01年に開業した角居勝彦厩舎に移り、08年オークス馬トールポピーや11年秋華賞馬アヴェンチュラ、15年チャンピオンズCを制したサンビスタなどを手がけた。そして18年に現在の友道厩舎へ。乗ってみるとドウデュースは他馬と明らかに違った。「普段はボーッとしているが、走らせるとギアが切り替わる。ハットトリック(05年マイルCS、香港マイル勝ち)も凄かったが、ドウデュースのトップスピードは何倍も凄い。矢のように伸びてくれるんです」。追い切り以外の稽古も含め、肌で感じる様子を語った。 無敗3連勝で制した21年朝日杯FS、世代の頂点に立った22年ダービー、苦しいシーズンとなった23年は有馬記念で復活V。ドバイターフ、宝塚記念の敗戦をバネに今季初戦の天皇賞・秋で輝きを取り戻し、ジャパンCでは欧州の強豪を完封した。4年連続JRA・G1勝利を飾るなど競走馬として完成期を迎えた5歳秋、いよいよラストランを迎える。改めて、どういう存在なのか問われると「手がかからないし、友達みたいな感じ」と表現。「スピード、操縦性、タフさや脚元の丈夫さなどは僕が手がけた中でも抜けている。過去一番の状態で本番に向かえます。チーム一丸となって、とにかく無事にゲートへ連れていきたい」と週末を見据える。3年余りの月日はあっという間だった。「しんみりするのはレースが終わってから」と笑顔を絶やさない。固い絆で結ばれたコンビ。最高のフィナーレを迎えるに違いない。 ◇前川 和也(まえかわ・かずや)1976年(昭51)8月4日生まれ、香川県出身の48歳。98年に栗東・西浦勝一厩舎でトレセン入り。01年、角居勝彦厩舎の開業スタッフとして加わる。18年、友道康夫厩舎へ。思い出の有馬記念はオグリキャップが奇跡の復活Vを飾った90年。