日本政府が防衛費を上げる前にやるべき3つのこと
今の防衛費は防衛産業の生産力を超えている。武器弾薬の買い増しを理由に従来の5兆円から7~9兆円まで増やしたが、工場の生産規模拡大は防衛費増額に追いついていない。 そのため防衛施設産業、つまりは建設業への発注増で予算の使い切りを狙った形である。だからこそ、中止しても差し支えはない事業なのである。 以上の3支出を見直せば、防衛費は従来と同じ予算規模に収まる。2024年度予算であれば陸自支出を推定3兆円から、従来の海空と同額である1.2兆円に抑える。
そのうえで2024年分の新戦闘機開発経費700億円、耐震補強の3200億円の支出を取り去ると従来額の5兆円台となる。 ■情報本部や防衛装備庁にも調整の余地あり それでいて中国対策は強化となる。海空自衛隊向けの支出は6割増のままだからだ。敵国攻撃用のトマホークやJASSMミサイル(空対地スタンドオフミサイル)の購入数も増やせる。それらを収容する弾庫整備もそのまま進められる。 それ以上の縮小も可能だ。予算配分では陸自以外も見直すべき対象はある。情報本部や防衛装備庁にも調整の余地はある。人材育成の成果は上げているものの、防衛大学校や防衛医科大学校への配分も再考すべき余地がある。
装備調達の問題も新戦闘機に限らない。国産品は全体を見直したほうがよい。とくに武器については、概ね海外製のほうが優れている。低価格であり信頼性もあり開発費もいらない。扱う自衛官でさえも海外製のほうが好ましいと考えている。 施設も耐震改修の取りやめだけではない。基地の整理統合による予算節減は可能である。また基地内での居住制度を廃止すれば、隊員が住む生活隊舎も廃止できる。人口減少に伴う自衛隊縮小や募集難からすれば、将来的には基地整理や隊舎廃止は避けられない。それなら先手を打ったほうがよい。
文谷 数重 :軍事ライター