レイオフを実施した ナイキ 、カナダグース、リーバイス。D2Cビジネスの「拡大」計画に苦しむ
「D2Cからの脱却」を明言はしていないが……
カナダグースは最近の発表でD2Cの縮小には言及しなかったが、卸売に関して問題を抱えている。同社は百貨店チェーンのノードストローム(Nordstrom)やサックスフィフスアベニュー(Saks Fifth Avenue)などのパートナーを通じて販売しているが、前四半期の卸売売上は前年同期比で28%減少した。カナダグースは、このひとつとして「既存顧客からの注文の減少に起因する、計画に折り込み済みの見込み注文額の減少」にあるとしている。同社は決算発表のなかで、「先を見越して在庫を管理することで、卸売パートナーからの収益が増すことが予想される」と補足した。 カナダグースと同様に、リーバイスもD2Cからの脱却は示唆していない。実際、同社の2カ年成長計画では「D2Cファースト戦略」の加速が特に言及されている。リーバイスは最近、同社初の最高デジタル責任者を任命し、2027年までにD2Cが総収益の55%を占めるようになることをめざしている。前四半期は、D2Cが収益の42%を占め、前年同期の39%から増加した。 しかし、リーバイスも卸売の減速が見られており、事業全体に影響を及ぼしている。卸売の純収益は報告ベースで2%減少した。それでも同社は、D2Cを押し進めながら状況を好転させることができると、前向きの姿勢を崩さなかった。CEOのミシェル・ガス氏は1月に、「当社の卸売事業を安定させるための取り組みはうまくいっている」と発言した。「2024年の見通しとして、卸売事業は引き続き慎重に計画しているが、この重要なチャネルについては慎重ながらも楽観視している」。 一方、ナイキは卸売事業の成長に努めた結果、卸売売上が前年比で3%増加した。同社によると、レイオフは「将来の成長を促し、イノベーションを加速させ規模を拡大し、長期的な収益向上を推進する」ために12月に発表した20億ドル(約3030億円)の大規模なコスト削減プログラムの一環であるとのことだ。 8000店の実店舗、5つのグローバルコンセプト、4つのアプリを所有するナイキは、そのD2C戦略に亀裂が生じはじめている。前四半期、D2C全体の売上はわずかに増加したものの、ナイキブランドのデジタル売上は2015年以来初めて減少した。 そして昨年ナイキはD2Cファースト戦略の下で停止していた、スポーツ用品チェーンのフットロッカー(Foot Locker)、シューズ小売チェーンのDSW、百貨店チェーンのメイシーズ(Macy’s)との卸売関係を再開した。 ナイキのCEOを務めるジョン・ドナホー氏は3月、ナイキが卸売パートナーにさらに「傾注」する必要があると公に発表した。「ナイキが本来のポテンシャルを発揮していないことはわかっている。当社のD2C加速戦略は、成長と消費者との直接的なつながりを推進してきたが、いくつか重要な調整を実施する必要があることは明らかだ」。