レイオフを実施した ナイキ 、カナダグース、リーバイス。D2Cビジネスの「拡大」計画に苦しむ
バランスをとるための施策
企業によっては、D2Cに全力で取り組むことが理想的な動きとなる場合もある。流通、マーケティング、プロモーションを自社内で完結させつつ、すべての顧客データを所有し、管理できる。直営店舗にスタッフを配置し、自社のウェブトラフィックを把握することもできる。 店舗内管理ソリューションプロバイダーであるオプティマムリテイリング(Optimum Retailing)の共同創業者兼CEOを務めるサム・バイス氏は、リーバイスやカナダグースなど強固な意志を持ってD2Cを押し進めているブランドは、その戦略に徹底的に打ち込む必要があるという。「D2Cをやるのなら、D2Cだけをやるべきだ」と同氏は米モダンリテールに語った。「D2Cに専念せずにほかの場所でも商品を購入できるというのは、消費者としては少し不思議に思う。私は卸売戦略をまったく理解できない。そのブランドの価値を下げてしまうのではないか」。 コンサルティング会社のガートナー(Gartner)でシニアディレクターアナリストを務めるアント・デュフィン氏は、D2Cは力のあるブランドには間違いなく利益をもたらしていると米モダンリテールに語った。一方で、D2Cには限界があるかもしれないとも付け加えた。特に、消費者が百貨店やショッピングモールなどのほかのサードパーティから商品を購入したいと思っているときは、「ちょっとしたガラスの天井のようなものが存在する可能性がある」という。 「現在、D2Cに注力している多くのブランドがこれに気づきはじめ、『売れるのであれば、どこで売れたかは本当に重要なのだろうか? もちろん、収益性の観点でいえば明らかにD2Cのほうが優れているが、卸売パートナーを通じて売上を上げることができるのであれば、競合他社にその売上を奪われるよりましだ』と言いはじめているだろう。これにより、バランスのとれた良いブランドがどのようなものであるかというダイナミズムを変えたのだと思う。要は、総合的に見て成長しているかどうかだ」。 カナダグースなど多くのブランドは、D2Cの売上を伸ばす施策を進めている。しかし、ビジネスの何パーセントをD2C売上が占めるようにするかについて、高い目標を立てることは難しいかもしれないとダフィン氏は話す。ブランドは、顧客がどこでどのように自社商品と接触しているかを追跡し、「予想の再調整」をする必要があるという。 「高価格で、独占性が高く、場合によっては流通量が十分に多いブランドであれば、D2Cにまだ意味があると思う。しかしそこで問題になるのは、その進化の先にある課題とは何なのかということだ」と同氏は語った。「実際のところ、ブランドがどう考えるかだ。つまり、『仮の話として、当社ビジネスの70%をD2Cにしたい』と言ってはいるが、実際『良い』ように見えるのはビジネスの30%かもしれないということだ」。 [原文:Canada Goose, Levi & Nike hit snags in their quest to build bigger DTC businesses] Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:都築成果) Image via Canada Goose
編集部